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がん細胞の相互作用を明らかにする！ がん免疫学研究におけるフローサイトメトリーの役割とバイオマーカーの検証法

Written by | Published: 06.11.2021

がん免疫学研究の主要なターゲットの1つに、がん細胞によって利用されているチェックポイントタンパク質があります。正常な非罹患状態では、抑制性免疫チェックポイントタンパク質は、局所組織内の自己寛容と免疫応答の持続性を維持します。一方、腫瘍状態では、リガンド-受容体相互作用を介した免疫抵抗性を示すために、この自己調節機能を使用します。たとえば、免疫チェックポイントタンパク質PD-1は、現在抗体療法の標的化に成功しているアポトーシスの調節因子であり、免疫応答中のT細胞増殖を維持するために重要なバイオマーカーです。リガンド（PD-L1）を発現する腫瘍細胞によるPD-1の結合は、抗腫瘍反応を弱め、腫瘍形成を促進します。多くの免疫チェックポイントタンパク質は、同様の方法でがん細胞によって利用されます。

サーモフィッシャーサイエンティフィックは、このような免疫系と、がんの相互作用を深く理解するのに役立つ多くの研究プラットホームおよび製品を提供しています。今回はその中でも、チェックポイントタンパク質の識別、発見、および特性評価におけるフローサイトメトリーの活用についてご紹介します。

▼こんな方におすすめです！
・フローサイトメトリーにより、がん細胞の免疫チェックポイント経路を明らかにしたい方
・次世代シーケンサとの組み合わせにより、免疫関連遺伝子のプロファイリングを行いたい方

フローサイトメトリーによる免疫チェックポイントの発見

免疫応答中に生成されたバイオマーカーを定量化することで患者の免疫細胞を特定して表現型を決定できるアッセイの必要性は、研究者と臨床医の間で同様に高まっています。当社のフローサイトメトリー抗体と蛍光試薬の幅広いラインアップにより、研究者は簡単にマルチパラメーター抗体パネルを作成し、免疫細胞のチェックポイントについて明らかにすることができます。

たとえば、PD-1／PD-L1はT細胞の抗腫瘍活性を抑制することによって免疫系を回避するように機能する、共抑制経路です。このPD-1／PD-L1経路を標的とし、その共抑制のシグナル伝達をブロックする抗体（例：ニボルマブおよびペンブロリズマブなどのチェックポイント阻害剤）を用いた研究では、進行期のがんとの闘いにおいて永続的な臨床結果が示されています。

がんシグナル伝達経路がひと目でわかるビジュアルポスター（英語版）がこちらからダウンロードできます。

免疫チェックポイント フローサイトメトリーワークフロー

チェックポイント阻害剤の目的は、T細胞が徐々に機能を失う状態（T細胞枯渇）を防ぐことです。腫瘍サンプルに含まれる免疫細胞の機能は、サイトカイン産生量を検出することで評価します。たとえば、T細胞およびNK細胞は、インターフェロンガンマ（IFN-γ）を産生することで炎症状態または宿主防御下で免疫応答を発揮するため、腫瘍サンプル中のIFN-γを産生するCD8+またはCD4+ T細胞をマルチパラメーターフローサイトメトリーで定量することで免疫細胞の活性を評価できます。

がん免疫学研究では、特定の免疫細胞のマーカー発現やサイトカイン産生量などの希少イベントを検出することが求められるため、より信頼性の高いデータ精度の獲得を実現することが期待されます。Invitrogen™ Attune™ NxT Flow Cytometerのアコースティックフォーカシング技術は、サンプルを濃縮することなく、大容量サンプルを従来のハイドロダイナミックフォーカシングシステムの最大10 倍の測定スピードを実現します。そのため、貴重ながん患者サンプルのロスを最小限に抑え、全細胞の1%未満の細胞集団でも信頼性の高い精度で検出できます。また、臓器由来の粘着性サンプル、がん組織由来細胞であっても、フローサイトメトリーユーザーにとって深刻な流路の詰まりを気にすることなく、瞬時に解析を行うことができます。

さらに、Invitrogen™ PrimeFlow™ RNA Assay Kitを用いることで、シングルセルにおけるRNAとタンパク質の発現をフローサイトメーターで同時に検出できるようになります。たとえば、PD-1や、T細胞マーカーのCD8やCD4に対する抗体を組み合わせて同時に検出することで、PD-1のmRNAを特異的に検出できます。Attune NxT Flow Cytometerを用いてT細胞におけるPD-1の発現をPrimeFlow RNAアッセイによりmRNAレベルで検出した例はこちらをご覧ください。

免疫関連遺伝子のゲノムバイオマーカー検証ツール

臨床研究で免疫チェックポイント阻害剤を使用するにあたって、現在どのようながんが研究対象として最適かを判断するために、信頼性の高い新たなバイオマーカーの発見が期待されています。当社は、既知のチェックポイント阻害剤および免疫関連遺伝子のゲノムバイオマーカー検証のためにさまざまな解析プラットホームを提供しています。Ion Torrent™ 次世代シーケンサで使用できる、以下のようながん免疫研究のためのOncomine™シリーズを提供しています。

・TCR・BCR解析のためのOncomine™ TCR・BCRアッセイ
・がん抗原を生み出す体細胞変異量を定量するためのOncomine™ Tumor Mutation Loadアッセイ
・腫瘍周辺環境の遺伝子発現解析のためのOncomine™  Immune Response Research アッセイ

このようなOncomineシリーズを活用して、がんゲノムデータセットを詳細に解析することにより、新たな免疫応答バイオマーカーの発見や、免疫療法に対する反応の予測につながります。免疫レパートリー調査についてさらに詳しく知りたい方は、こちらのブログをご覧ください。

Ion Torrent次世代シーケンサの基本を知りたい方はこちら。

NGSを用いた精密腫瘍学に関するシーケンスガイドがこちらからダウンロードできます。

まとめ

・Attune NxT Flow Cytometerを用いたマルチパラメータ抗体アッセイにより、貴重ながん患者サンプルの免疫チェックポイント経路を明らかにし、検査スピードとデータ精度の両立を実現します。
・Ion Torrent次世代シーケンサとOncomineシリーズを活用して、迅速にがんゲノムマーカーを検証します。

Attune実績 / ユーザーボイス

・自己免疫疾患に関連するC型レクチン受容体の機能理解を目指して（東北医科薬科大学医学部免疫学 中村晃 氏/海部知則 氏）

・間葉系細胞による免疫細胞の「末梢教育」に着目し、アレルギーや慢性疾患の機序解明へ（千葉大学イノベーション医学領域 倉島洋介 氏）

・疾患特異的マクロファージの機能的多様性（大阪大学微生物病研究所 佐藤荘 氏）

【無料公開中】がん免疫研究フローサイトメトリーワークフロー

本ガイドブックでは、腫瘍微小環境、免疫チェックポイント解析、およびCAR T 特性評価に関する研究など、がん免疫学研究におすすめのフローサイトメトリーのワークフローやツールをご紹介しています。PDFファイルのダウンロードをご希望の方は、以下のボタンよりお申し込みください。

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