LIMS(ラボ情報管理システム)は、製造における品質管理、またはR&D部門の分析データ管理など、世界中のさまざまな業界の分析ラボで、幅広くその導入が広まっています。
今回は、アメリカに本社をおく機能化学品企業、アルベマール社において、試験所認定のISO 17025への対応、またSAP QM(品質管理)モジュールとの連携による社内のデータシステムの統合を目的として、Thermo Scientific™ SampleManager™ LIMSソフトウエアを導入した事例について、ご紹介します。
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アルベマール社におけるLIMSの導入:
近年、電気自動車の急速な市場拡大を背景に、アルベマール社のリチウム事業は大きく成長しています。電気自動車や電子機器の動力に不可欠な炭酸リチウムは、アルベマール社のチリにおける工場、ラ・ネグラ工場で生産されています。炭酸リチウムの製造においては、複雑な製造プロセスや品質管理が必要とされます。アルベマール社はラ・ネグラ工場の品質管理のラボにおいて、品質管理や精度のさらなる向上、またISOなどへのコンプライアンス対応を強化するため、分析のワークフローを抜本的に見直し、LIMS(ラボ情報管理システム)の導入を行いました。
従来のラボ・分析ワークフロー上の課題:
SampleManager LIMSソフトウエアを導入する以前、アルベマール社は分析データの管理と、社内のSAPシステム上への分析結果の登録作業を手作業で行っていました。各装置で測定した分析の結果データを目視で確認し、手作業でエクセル上に転記するという作業フローであったため、転記ミスが発生しやすいという課題がありました。またその転記ミスを防止するため、複数回の確認作業を行う必要があり、確認作業も含めて多くの時間を要していました。さらに、SAP-QM(品質管理)システムへその結果を登録する必要があったのですが、その登録も手作業のため、そこでも作業に時間がかかり、数値自体の整合性も含めて、大きな課題となっていました。アルベマール社においては、リチウム業界の厳しい業界品質水準を満たすため、システムの導入により、より一元化されたデータの自動化が必要であると判断しました。
SampleManager LIMSソフトウエアの採用:
SampleManager LIMSソフトウエアは、ラボの分析フローを自動化することを目的として設計された、パッケージのLIMSソフトウエアです。カスタマイズをできる限り行わず、ソフトウエア自体の基本機能を、お客さまのフローに合わせて「設定」させていくことで構築できる点が特長です。数あるLIMSベンダーの中から、アルベマール社がSampleManager LIMSソフトウエアの導入を決定したのは、LIMSだけでなくSDMS(科学データ管理システム)、ELN(電子ラボノート)、LES(ラボ実行システム)など、統合的な機能を持ったソリューションであるという点、UIが使いやすいという点、また、試験所認定でもあるISO 17025など、業界標準に対応している点などが主な背景でした。アルベマールは、SampleManager LIMSソフトウエアの導入によって、従来の手作業による分析データの転記作業と管理から、完全に自動化したワークフローに大きく変化させることができたのです。
SampleManager LIMSソフトウエアの導入プロジェクト:
LIMSソフトウエアの実装は、単なる技術的な作業ではありません。LIMSを導入するお客さまの組織全体の関係者がプロジェクトチームを組み、当社のLIMS導入支援チームと共同で行うプロジェクトです。アルベマール社のLIMS導入プロジェクトにおいては、当社のLIMS導入支援チームがプロジェクト全体をリードし、SAP HANAや、統計・分析用のNWAソリューションといった既存システムとLIMSのシステム連携の構想や設計を行いました。これらの既存システムとの連携により、試験の結果データや統計解析のデータを、LIMS側から他システムへ、リアルタイムに連携させることができるようになりました。それにより、部門間での結果データの共有や、データに基づいた意思決定の迅速化がもたらされ、リチウム生産における業界リーダーとして、アルベマール社の事業のさらなる強化につながりました。
LIMS導入によるメリットと、今後の展望:
SampleManager LIMSソフトウエアの導入により、作業時間短縮による生産性向上や、データの精度向上、オペレーションの効率化以外にも、アルベマール社にとってさまざまな利点がもたされました。例えば、サンプリングのプログラムや、分析のスケジュール設定といったプロセスの自動化により、分析試験に要する時間が従来よりも大幅に短縮されました。また、ISO 17025といった規格にも準拠できるようになりました。
アルベマール社は、今後も他の事業においても、SampleManager LIMSソフトウエアの導入を展開していく予定です。分析予測モデリングのため、気象観測所などのシステムとの連携も視野に入れています。
SampleManager LIMSソフトウエアは、リチウム生産における卓越したオペレーションと、持続可能性を目指すアルベマール社の取り組みにおいて、DXという変革をもたらすひとつの要素となりました。アルベマール社では、LIMSというDXのワークフローを採用したことで、データ管理の自動化や他の基幹システムとの連携により、さらなるイノベーションと効率化が促進されています。
LIMSは今後も、製薬・化学・石油、またこのような先進的なリチウム市場においても、時代の変化と変革を支える、ソリューションになると考えています。
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