現在、日本国内における食品中の高極性残留農薬を対象とした公示試験法の多くには個別分析法が採用されています。
これらはかなり昔に開発されたものであるため、さまざまな問題が指摘されており、欧州では、上述した問題点を克服した一斉分析法Quick Polar Pesticides Method(QuPPe Method)が近年開発され、注目を集めています。
そこで当社ではQuPPe Methodのような簡便な方法で、イオンクロマトグラフ-高分解能質量分析計(IC-HRMS)を用いた高極性農薬一斉分析法の検討を行いました。
すぐに実験データをご覧になりたい方はこちらからダウンロードしていただけます。
なぜ残留農薬試験が必要なのか
そもそも残留農薬試験は何のために行うのでしょうか?
日本も含む世界の国々は、自国で販売される食品に対して、農薬のMRL(最大残留限度)を設定しています。
そのため、成分分析の結果、販売したい食品に残留農薬がMRLの残留農薬基準値を超えて存在している場合、その食品の販売は禁止されてしまいます。
また、残留基準が設定されていない無登録の農薬は、厚生労働省が平成15年に新しく設定したポジティブリスト制度によって、一律基準と呼ばれる規制の対象となり、一定の量を超える農薬成分が食品中に残留していると規制の対象になります。
これらのことから、日本国内についても海外についても、食品販売を行うためには残留農薬の分析と検査を行う必要があるのです。
QuPPe Methodをはじめとする一斉分析が求められている背景
冒頭で少し触れた通り、日本国内で現在主流となっている個別分析法にはさまざまな問題が指摘されています。
例えば、
- 発がん性のあるジクロロメタンやクロロホルムなどを用いる
- 液-液分配、誘導体化、オープンカラムクロマトグラフィーなどの煩雑な前処理操作がある
- 多岐にわたる測定機器を揃えなければならない
といった点です。
現在、ヨーロッパで注目を集めているQuPPe Methodをはじめとする一斉分析法は、これらの問題を克服しているため、日本国内でも検討が進められています。
一斉分析の導入について
今回、QuPPe MethodをベースにIC-HRMSを用いて簡便に高極性農薬の一斉分析ができるメソッドを開発しました。
ホセチル、アセフェート、グルホシネート、N-アセチルグルホシネート、3-ヒドロキシメチルホスフィニコプロピオン酸(MPPA)、アミノメチルリン酸(AMPA)、亜リン酸、エテホン、クロピラリド、グリホサートの計10種類の化合物を対象とした検出感度のデータや、添加回収試験を行った際の添加回収率もご確認いただけます。
一斉分析の導入をご検討されている方は、下のリンクより資料をダウンロードしてご覧ください。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。