▼もくじ
汚染除去、消毒、滅菌の定義
- 汚染除去(decontamiation):微生物を除去、および/あるいは殺菌するプロセス。ケミカルハザードの恐れのある物質や放射性物質の除去や中和の意味でも使われる。
- 消毒(disinfection):物理的または化学的に微生物を殺菌すること。芽胞は含まれないことがある。
- 滅菌(sterilization):全てのクラスの微生物および芽胞を殺菌、および/あるいは除去すること。
(定義はWHOのLaboratory biosafetyマニュアルによる)
サンプル別ピペットの洗浄方法まとめ
汚染除去の必要性はピペットの使い方や溶液の種類によって異なります。汚染除去を行う前に、ピペットの化学的適合性を確認してください。必要に応じて保護衣、保護めがね、ディスポーザブル手袋などを着用してください。
Finnpipetteの汚染除去のガイドラインを下記に示します。よく使われるサンプルについて、一般的な取扱方法と洗浄方法についてまとめたものです。液体の種類や使用条件によっては、さらに注意が必要なケースもあります。また、各施設等で取扱方法その他について規定がある場合は、そちらを遵守してください。
水溶液、 バッファ類
取扱方法・特徴
蒸留水でピペットを検定します。正確に分注することができます。
洗浄方法
ピペットを分解し、汚染されたパーツを蒸留水で十分すすぎ、乾かして下さい。60°C以下の乾燥機等で乾燥させることができます。必要に応じて、ピペット同梱のグリースをうすく塗ってください。
酸
取扱方法・特徴
濃度の高い酸を頻繁に分注する場合は、ピペットの下部パーツを時々蒸留水ですすいでください。また、Finntipフィルターの使用もお勧めします。
洗浄方法
酸やアルカリを扱う場合は、チップコーンやチップイジェクタの下部パーツを蒸留水で頻繁にクリーニングすることをお勧めします。Finnpipetteは耐酸性のプラスティックを使用していますが、酸のエアロゾルがピペットのチップコーン内に入り、ピペットの性能に影響を及ぼすことがあります。上記の「水溶液」と同様の方法でピペットのメンテナンスを行ってください。
アルカリ
取扱方法・特徴
濃度の高いアルカリを頻繁に分注する場合は、ピペットの下部パーツを時々蒸留水ですすいでください。また、Finntipフィルターの使用もお勧めします。
洗浄方法
Finnpipetteは耐アルカリ性のプラスティックを使用していますが、アルカリ性のエアロゾルがピペットのチップコーン内に入り、ピペットの性能に影響を及ぼすことがあります。上記の「水溶液」と同様の方法でピペットのメンテナンスを行ってください。
感染の恐れがある試料
取扱方法・特徴
汚染防止のため、Finntipフィルターを使用してください。または、強制置換方式のピペットを使うこともできます。
洗浄方法
70%エタノールを用いて消毒してください。チップコーンとチップイジェクタは分解してエタノールに一晩浸けておくことができます。Finnpipette F2は、ピペットを分解せずに121°C、20分間オートクレーブにかけることができます。ウィルスや芽胞は5%次亜塩素酸ナトリウムに浸したティッシュで拭いて不活化してください。その後、きれいなティッシュを蒸留水に浸し、よく拭きとってください。
細胞培養液
取扱方法・特徴
無菌性を確保するため、Finntipフィルターを使用してください。
洗浄方法
上記「感染の恐れがある試料」と同様に対処してください。
有機溶媒
取扱方法・特徴
- 比重が水と異なります。したがって、ピペットのキャリブレーションと調整が必要です。
- 蒸発しやすいので、ピペッティングはすばやく行ってください。
- ピペッティング終了後、ピペットを分解して、溶媒を完全に蒸発させます。
洗浄方法
溶媒は蒸発しやすいので、通常は左記3.によって溶媒を完全に蒸発させれば大丈夫です。あるいは、溶媒が付着したパーツを洗剤液に浸け、その後蒸留水でよくすすぎ、完全に乾かしてください。乾燥には60°C以下の乾燥機を使用することができます。必要に応じて、ピペット同梱のグリースをうすく塗ってください。
放射性物質
取扱方法・特徴
汚染防止のため、Finntipフィルターを使用するか、強制置換方式のピペットを使用してください。
洗浄方法
- ピペットを分解し、汚染されたパーツを強力な洗剤または専用クリーニング液に浸けてください。蒸留水で何度かすすぎ、乾かしてください。
- 汚染除去は、放射活性が許容できる範囲にまで減衰していることが確認できるまで行います。汚染除去に使用したものはすべて放射性廃棄物となりますので、廃棄の際は法令にしたがってください。
- 乾燥には60°C以下の乾燥機を使用することができます。必要に応じて、ピペット同梱のグリースをうすく塗ってください。
タンパク質
取扱方法・特徴
汚染防止のため、Finntipフィルターを使用するか、強制置換方式のピペットを使用してください。
洗浄方法
溶媒が付着したパーツを洗剤液に浸け、その後蒸留水でよくすすぎ、完全に乾かしてください。乾燥には60°C以下の乾燥機を使用することができます。必要に応じて、グリースをうすく塗ってください。
核酸
取扱方法・特徴
汚染防止のため、Finntipフィルターを使用するか、強制置換方式のピペットを使用してください。
洗浄方法
- DNAはピペットを分解し、汚染されたパーツを3%(W/V)以上の次亜塩素酸ナトリウムに15分以上浸けることで除去できます。蒸留水でよくすすぎ、完全に乾かしてください。
- DNA AWAYを用いてピペットのパーツを処理してください。
- UVライトの照射(30-60分)は、ピペット表面のDNA汚染を軽減しますが、完全除去には至りません。
- RNAは分解が速く、常在するRNaseの影響を受けやすいので、特別な処理は不要です。
なるべくオートクレーブにかけることをお勧めします。または、ピペットを分解し、汚染されたパーツを90%エタノールで拭い、つぎに2M 酢酸ナトリウムで拭き、もう一度90%エタノールで拭います。
DNase、RNase
洗浄方法
- RNaseは最初に洗剤液でピペットをクリーニングし、水で十分にすすぎ、乾燥を速めるために95%エタノールを使って除去します。その後、ピペットパーツを3%過酸化水素水に10分間浸します。最後にパーツをDEPC処理水で十分にすすぎ、乾かします。
- RNase AWAYを用いてピペットのパーツを処理してください。
- DNaseはオートクレーブ(121°C、15分)で失活します。
ウィルス、マイコプラズマ、バクテリア、カビ
洗浄方法
UV照射はウィルス、マイコプラズマ、バクテリア、カビを不活性化する実用的な方法です。FinnpipetteはUV耐性ですが、UVを照射するとハンドルの色が変色することがあります。ピペットの内部パーツにUV照射を行う場合はピストンとO-リングにグリースを塗ることを忘れないでください。
その他の注意点
-
- 修理・点検等のため、ピペットを施設外に出す場合、必ず汚染除去の操作をしてください。
- ピペットを組み立てる前にピストンを70%エタノールで拭き、ピペットに付属しているグリースを薄く塗ってください。
- RNaseを除去するときは、新しく開封したエタノールを使用し、DEPC処理水を用いて調製した70%エタノールを使用してください。
いかがでしたでしょうか?
ピペットが汚れてしまったときは、サンプルに適した洗浄方法を選んでクリーニングしましょう!
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