今回は、リアルタイムPCRとノーザンブロッティング、2つの解析手法を比較することで、リアルタイムPCRの利点をチェックしていきます。遺伝子発現定量解析の効率と精度がどれだけ向上するのか、実験データからも読み解きます。
▼もくじ
はじめに
10数年前、遺伝子発現定量解析の手法といえば、ノーザンブロッティングでした。リアルタイムPCRシステムが出始めたばかりの当時は、論文投稿でリアルタイムPCRのデータだけではレフェリーに認めてもらえず、ノーザンブロッティングの写真の提出を求められたこともあったのです。
へーえ、そんな時代があったんですか! 今回は、リアルタイムPCRとノーザンブロッティング、新旧2つの解析手法を比較することで、リアルタイムPCRの利点をみていきます。若い研究者の方は、そもそもノーザンブロッティングの「現物」を見たことがないかもしれませんが、まわりの先輩に聞いてみると面白いかもしれませんよ!
利点1:解析時間が短く、時間を節約できる!
図1 実験時間の比較 -ノーザンブロッティングとリアルタイムPCR-
図1をご覧いただくと、その差は一目瞭然です。リアルタイムPCRの導入によって、ノーザンブロッティングでは1日以上費やしていた実験が、早くて40分程度でできるようになりました。また、一度に処理できるサンプルの数もリアルタイムPCRのほうがはるかに多く、効率アップしています。
利点2:定量性が高く、僅かな差も見逃さない!
図2 ノーザンブロッティングによる結果の例
図2は、ノーザンブロッティングによる各遺伝子の検出結果です。写真のイメージを取り込み、バンドの濃淡を数値化して定量するのですが、定量性があまり高いデータとはいえません。解析する遺伝子の発現量の変動が大きいときには良いのですが、変動が小さいときは、バンドの濃淡から遺伝子発現量の変化を読み取れないという問題が生じるのです。また、ダイナミクスレンジの幅が狭く、高発現のサンプルと低発現のサンプルを同時に測定することは困難です。
図3 リアルタイムPCRシステムのABI PRISM® 7000システムによるc-myc遺伝子の定量結果(SYBR® Green1 Dyeを使用)
このデータは、弊社の試薬・装置を用いたサンプル遺伝子の検出結果です。縦軸はThreshold Cycle(Ct)を示しており、pg(ピコグラム)オーダーまで測定できることがわかります。最新型のリアルタイムPCRでは、1,000コピーのサンプルと1,500コピーのサンプルのような、1.5倍の僅かなターゲット量の差も測定可能です。
ノーザンブロッティングと比較すると、「解析時間が短く、時間を節約できる」「定量性が高く、僅かな差も見逃さない」というリアルタイムPCRの利点が見えてきますね。
そうです。リアルタイムPCRがない時、ある時を比べると、遺伝子発現定量解析の効率と精度がどれだけ向上したのかがわかります。今では、リアルタイムPCRを用いた研究は数多く報告され、その信憑性を疑われることもなくなっていますから、安心です。
TS白神
いやはや、勉強になりました。次回はリアルタイムPCRのコストについて考えます。お楽しみに!
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