リアルタイムPCR装置の多くは96ウェルブロックが搭載されています。よくいただくご質問に「1つの実験を96ウェルの中で完結させなければいけないのか?」というものがありますが、必ずしも1枚のプレートで完結させる必要はありません。弊社では複数枚のプレートにまたがったデータを解析できるソフトウエア「ExpressionSuite Software」を無償で提供しています。このソフトウエアを使用すれば、どなたでも簡単に複数枚のプレートをまとめて解析できます。今回の記事ではExpressionSuite Softwareを使うための条件や使用方法、得られるデータについてご説明します。
▼こんな方におすすめです!
・ΔΔCT(Comparative CT)法で解析されている方
・サンプルや測定する遺伝子の数が多い方
・Applied Bisystems™ TaqMan™ Array plate/cardを使用されている方
ExpressionSuite Softwareのダウンロードページ
ExpressionSuite Softwareを使用するための条件
ExpressionSuite Softwareで解析するためにはランデータが下記の3つの条件を満たす必要があります。
- ΔΔCT法での測定であること
- ΔΔCT法のデータを解析するためのソフトウエアです。ランデータのExperiment typeをΔΔCTに指定します。
- 全ての実験データが同一条件でランされていること
- 測定装置やランのプログラムが同じである必要があります。異なる条件でランしたデータをまとめて解析することはできません。
- 共通の内在性コントロール遺伝子をランごとに測定していること
- 表現がわかりづらいので具体的な例でご説明します。96種類のターゲットを96サンプルについて測定する場合、2つのレイアウトが考えられます。1つ目はターゲットごとにまとめる方法で、1枚のプレートで96サンプルに対して1つのターゲットを測定します。2つ目はサンプルごとにまとめる方法で、1枚のプレートで1つのサンプルに対して96ターゲットを全て測定する方法です。ExpressionSuite Softwareで解析できるのは後者のサンプルごとにまとめたデータです。これは測定したタイミングのサンプル状態を反映している内在性コントロールの測定値で補正するべきという考えた方によるものです。そのため同じプレート内で内在性コントロールが測定される必要があるのです。
対応している装置とソフトウエアのバーションは下記の表をご覧ください。

表1 ExpressionSuite Softwareに対応している装置とソフトウエアのバージョン
PCの要件は下記3点です。
- Windows™ 7, SP1 or Windows™ 10
- Pentium 4 or compatible, with minimum 2GB of RAM and 20 GB of hard drive capacity
- Minimum monitor resolution of 1280×1024
ExpressionSuite Softwareでの解析方法
ExpressionSuite Softwareでの解析にはバイオインフォマティクスの知識は不要です。データを取り込み、内在性コントロールとリファレンスサンプルを設定するだけで簡単に解析できます。具体的な手順を見てみましょう。
- ソフトウエアの立ち上げとStudyの作成
- ソフトウエアを立ち上げCreate Studyをクリックします。Study nameを入力します。
- ソフトウエアを立ち上げCreate Studyをクリックします。Study nameを入力します。
- データの取り込み
- 画面左側メニューSetup内のExperimentsメニューをクリックします。
- Importボタンをクリックし、対象のランの生データ(拡張子.eds)を取り込みます。
- 内在性コントロールの指定
- Targets and controls画面を開きます。
- Targetを選択した状態で「Assign Type」をクリックします。「Endogenous Control」に指定したものが内在性コントロールとして補正に使用されます。
- 「Candidate control」に指定すると画面下部に各サンプルのCt値をプロットしたグラフが表示されます。サンプル間のCt値の差を視覚的にとらえることができるため、内在性コントロールを選択するために便利なグラフです。
- リファレンスサンプルの指定
- 画面上部にあるAnalysis Settingsボタンをクリックし、Relative Quantification Settingsタブを開きます。「Reference Sample」に指定したサンプルが相対比を求めるための基準となります。
- 画面上部にあるAnalysis Settingsボタンをクリックし、Relative Quantification Settingsタブを開きます。「Reference Sample」に指定したサンプルが相対比を求めるための基準となります。
- 解析の実施
- 上部にある緑色の三角マーク「Analyze」ボタンをクリックして解析を実施します。
解析データの例
解析結果では相対比のグラフ以外にもヒートマップが作成され、データを可視化できます。
「Gene Expression」画面では相対比のグラフが表示されます。
「Heat Map」ではヒートマップでデータが表示されます。発現パターンが似ているサンプルやターゲット遺伝子を見つけるのに役立ちます。
まとめ
ΔΔCTのデータを複数まとめて解析する方法をご紹介しました。難しい設定は不要で直感的に操作できるソフトウエアとなっていますので、ぜひご利用ください。
ソフトウエアは下記ページからダウンロード可能です。
リアルタイムPCR実験での「困った」を解決するトラブルシューティングガイドを配布しています。
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研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。