トリプル四重極質量分析計は、医薬品の血中薬物濃度測定や食品中の残留農薬分析、環境汚染物質の分析など幅広い分野で高感度定量分析のための検査業務に広く使用されるようになりました。一方で、この装置は紫外可視吸光検出器などの分光学的検出器や、シングル四重極質量分析計よりも高い選択性があり、高感度分析が可能です。しかし、定量分析用としてルーチン的に使用されるようになったため、なぜ高感度を必要とする定量分析に適しているのか、どのように選択性を高めているのか、十分な理解がないまま使用している方も多いのではないでしょうか。
この装置が開発され、上市された1980年代の用途は定量分析が目的ではなく、分子構造を解析するための定性分析が目的でした。この年代に天然物有機化合物の構造解析に有効である、といった論文が数多く投稿されており、研究者の注目を浴びていた技術であることが伺えます。1990年代に入ってからこの化合物の構造解析ができることを利用して、定量分析に応用できる、という報告が出始めます。トリプル四重極質量分析計は30年かけて、高感度で安定した定量分析が可能なシステムへと開発がすすめられたのです。
この記事では、トリプル四重極質量分析計の構造やその役割を定性分析の応用例とともに解説し、最後に定量分析に用いられるようになった理由を分かりやすく解説します。
▼こんな方におすすめです!
・これから有機化合物の定量分析をしたい方
・業務で使用しているトリプル四重極質量分析計のハードウエアの理解を深め、使用用途を広げたい方
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。