近年、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によるパンデミックにより、リモートワークがますます浸透するなど、人々の働き方は大きく変わりました。それに伴い、ラボでの働き方や仕事のあり方も変化しています。ラボなどの研究施設で働く科学者たちは、世界中で発生するウイルスとの戦いに素早く対応するべく、今まで以上にラボでのさまざまな研究や分析に関する社内外のコラボレーションを実現することが求められています。
ノボ ノルディスク社は、このようなコラボレーションを推進しているデンマークの企業です。SARS-CoV-2を詳しく解析するため、ノボ ノルディスク社はThermo Scientific™ Watson LIMS™ソフトウエアをラボの中で活用しています。ノボ ノルディスク社は、SARS-CoV-2抗体 保有調査を目的とした研究プロジェクトを実施しました。その調査では、ボランティアの参加者から血液サンプルを集めることで、12カ月間で約50,000個のサンプルを採取し、分析を行いました。
SARS-CoV-2抗体検査プロジェクトの詳細
「同一企業グループ内におけるSARS-CoV-2への抗体反応の特性」と名付けられたノボ ノルディスク社の研究プロジェクトは、ウイルスの検出自体ではなく、SARS-CoV-2に対する抗体保有者を検出することを目的としていました。企業という大きな集団グループ、およびその家族内での抗体保有者の数を調べることで、SARS-CoV-2の発生の変化を調査することを研究の目的としていました。
ノボ ノルディスク社は、デンマークを拠点とする同社のグループ関連会社の従業員およびその成人家族を、調査の対象としました。プロジェクトへの参加は任意で、無償によるボランティアで実施されました。同社はこの調査で約16,000人の参加者が集まる見込みと推定しています。調査は観察、および集団調査です。抗体サンプルは調査開始時(2020年7月から8月)に採取され、その6カ月後と12カ月後にサンプル採取が繰り返されました。
このSARS-CoV-2抗体検査は、調査対象としたノボ ノルディスク社の従業員を一般的なデンマークの労働人口のモデルと仮定し、労働人口におけるSARS-CoV-2抗体保有の割合に関する血清疫学を推定することを目的としていました。時間の経過に伴う抗体陽転の発生のほか、同一企業集団、もしくは家庭内におけるSARS-CoV-2の抗体保有の広まりの有無、そして抗体陽転に関する調査が行われました。調査参加者には、これまで新型コロナウイルス感染症のような症状があったかどうかについて記録するアンケートも併せて実施されました。このような調査によって、SARS-CoV-2に対する抗体保有の有無と、感染症の臨床症状歴を関連付けすることが可能になったのです。
ノボ ノルディスク社の非臨床および臨床アッセイサイエンス(NCAS)は、全サンプルの抗体の初期スクリーニングを実施しました。このスクリーニングでは、コペンハーゲン大学、デンマーク国立病院(Rigshospitalet)、そしてノボ ノルディスク社の研究者が開発した、SARS CoV-2抗体検査(サンドイッチELISA法)が使用されました。カールスバーグ財団とNovo Nordisk Foundationが調査について資金を提供し、調査で陽性となったサンプルは全てデンマーク国立病院に送られ、さらに詳しい特性評価が行われました。そこでは、サンプル内にどの抗体のアイソタイプが存在するのかを評価し、抗体の滴定を実施します。また、抗体がウイルスを中和するかどうかを調べ、プロジェクトの最終データ解析が行われました。
このプロジェクトに参加している組織の一つが、デンマーク国立血清研究所(Statens Serum Institut)です。デンマーク国立血清研究所は、初期のサンプル受理、全サンプルからの血清の準備、そしてノボ ノルディスク社に対するサンプルの出荷、また、調査に同意した参加者のサンプル保管を担っていました。
自動化とデータ処理
SARS-CoV2の抗体解析作業と実験装置は、ノボ ノルディスク社で日々行われている解析(GLP/GCP)やラボラトリー作業からは完全に独立したものでした。そのためノボ ノルディスク社では、この抗体解析作業のさらなる自動化を検討する機会となりました。
この抗体解析作業において、ノボ ノルディスク社はWatson LIMSソフトウエアを使用することで、二次元バーコードを使用してすべてのサンプルを正確に管理し、追跡できるようになりました。全てのサンプルは一次元および二次元バーコードが貼られた試験管で保管され、試験管96本用のラックに配置されます。デンマーク国立バイオバンクからのサンプル管理票と共にサンプルを受け取る際、ソフトウエア上でサンプル管理票データのインポートを行うことができるため、クリニックとラボラトリーの間でのサンプルの受け渡しが、スムーズに行われるようになりました。Watson LIMSソフトウエアが提供している重要な機能の一つが、高スループット研究に対してELISAアッセイの作業リストとデータ処理を容易にする点です。Watson LIMSソフトウエアの免疫応答モジュール(IRM)は、免疫原性検査において分析者をサポートします。IRMはアッセイの正常範囲となる境目の値を計算して判断し、陽性となる正常範囲以外の結果にフラグを立てます。
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Watson LIMSソフトウエアによる生物学的分析ワークフローの詳細は、弊社ウェブサイトからもご覧いただけます。
研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。