サンガーシーケンス反応において、きれいなテンプレートを使用することがとても重要です。貴重なサンプルを失うことなく、きれいなテンプレートを得るための、PCR産物を簡単に精製する方法があります。
そこで今回は、PCR産物のクリーンアップについて、ご紹介します。
▼こんな方におすすめです!
・これからシーケンス解析を始める方
・PCR産物の精製を簡単に済ませたい方
・サンガーシーケンシングがうまくいかない方
また、下記動画をご覧いただくことでより理解を深めることができます。
PCR産物をクリーンアップする目的
サンガーシーケンシングのワークフローは通常、ポリメラーゼ連鎖反応としても知られるPCRから始まります。プライマーとDNAポリメラーゼ、dNTPを使用して、ターゲット領域のDNA断片を増幅します。PCR後の反応液中には使用されなかったプライマーやdNTPが残存しているため、PCR産物をそのままテンプレートとして用いると、その後のシーケンス反応に干渉してしまいます。
正常にシーケンス反応を行うためには、PCR産物をクリーンアップする必要があります。
PCR産物をクリーンアップする方法
PCR産物のクリーンアップには、エタノール沈殿やカラム精製、酵素を用いた精製など、いくつかの方法があります。エタノール沈殿は、もっとも低コストですが、もっとも手間のかかる方法でもあります。カラム精製は、多くのアプリケーションにおいて効果的な方法ですが、他法に比べて少し高価になる傾向があります。さらに、サンプルをカラムに出し入れする必要があり、貴重なサンプルの一部が失われる可能性もあります。
酵素を用いた精製は、非常にシンプルなワークフローで、少ないピペッティング操作で完了し、カラム精製よりも低コストです。基本的な操作は、PCR溶液に酵素ミックスを加え、特定の温度に置いておくだけです。弊社で Applied Biosystems™ ExoSAP-IT™ Express PCR Product Cleanup Reagentという酵素を用いた精製キットを販売しています。
ExoSAP-IT ExpressによるPCR産物のクリーンアップ
ExoSAP-IT Expressには2種類の酵素が含まれています。
1つ目の酵素エキソヌクレアーゼIは、過剰なプライマーを消化します。2つ目の酵素アルカリホスファターゼは、PCR産物中の未反応のdNTPを脱リン酸化することで、シーケンス反応を妨げないようにします。
PCR溶液にこれらの酵素ミックスを加え、37℃で4分間置いておくだけで、酵素が反応しクリーンアップされます。その後、80℃で1分間処理することにより、2つの酵素を失活させてこの後のシーケンス反応は干渉しないようにします。
この結果、きれいなPCR産物が得られ、これをテンプレートとしてシーケンス反応を行うことができます。
まとめ
・シーケンス反応前に、PCR産物をクリーンアップする必要がある
・酵素処理によるクリーンアップが簡単
・ExoSAP-IT Expressでは 37℃-4分 → 80℃-1分 の計5分間の反応でサンプルをロスなくクリーンアップ可能
シーケンシングに関するトピックには、Seq It Out動画シリーズもご活用いただけます。
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