Thermo Fisher Scientific Liquid Chromatography / Dr. Timothy C
ウイルス治療に関連するワクチンや抗体医薬の研究、開発、製造分野では、これまで利益を保証する他の治療分野が優先されたため、あまり注目されていませんでしたが、その状況も変わりつつあります。この記事では、ワクチン開発の流れ(設計と製造)だけでなく、潜在的な治療法の研究に分析技術がどのように使用されているか、また使用することができるかを見ていきます。ウイルス研究におけるゲノムベースのアプローチにも興味のある方は、こちらの情報をご覧ください。
リサーチ
ワクチンの開発や治療薬の分析などの研究段階では、分析技術が頻繁に使用されます。液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)が、ウイルスの構造や特徴を明らかにし、コンポーネントを決定するために使用され、さらに最近の発表では細胞電子顕微鏡がウイルスの構造を明らかにするために使用されています。LC-MSのもう一つの用途は、ウイルス感染に対する宿主細胞(ウイルス感染細胞)応答を識別し、可能な治療ターゲットを特定することです。ここでは、SARS-CoV-2を細胞に感染させ、LC-MS、特にを用いて、ウイルスに応答した宿主細胞(ウイルス感染細胞)のプロテオーム解析を実施しました。その後、特定されたパスウェイをターゲットにした薬剤を試験し、ウイルスの複製を阻止できる薬剤が多数発見しました。
開発
開発段階では、より広範囲のクロマトグラフィー技術が一般的に使用されます。この段階では、治療薬やワクチンの候補が特定され、その有効性が評価されます。治療薬には、抗体ベースの治療薬(抗体医薬)のような高分子の薬剤や、低分子の薬剤があります。多くの場合、ウイルスが宿主細胞に侵入するのを防ぐか、何らかの方法でその複製を妨害することで機能します。ワクチンは、ウイルス抗原に対する抗体産生を促進し、ウイルスの侵入や複製を再び阻止するために使用される生物学的製剤です。ワクチンは、一般的にウイルスや特定のウイルス抗原を無効化または形態を改変し、これをレシピエントに投与することで、理想的にはこれらのウイルス抗原に対する抗体を産生し、実際のウイルスにさらされたときに効果的な免疫反応を起こすことができます。
ワクチン開発と抗ウイルス薬開発の両方において、分析技術は、開発プロセスに適した製品が製造されたかどうか、収量の推定、不純物や混入物質の存在を評価するために使用されます。この場合、最初は発見や識別にLC-MSが使用されることが多いですが、その後、可能な限り液体クロマトグラフィーに切り替えて、よりルーティンの分析を行います。
抗体医薬のような高分子治療薬では、さまざまな液体クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー、LC-MSのアプリケーションや異なるカラム化学物質を用いて、多くの特性評価を行う必要があります。さまざまなバイオ医薬品の特性評価技術の詳細については、ラーニングセンターをご覧ください。この段階では、最後に、表面プラズモン共鳴(SPR)などの技術を用いて、治療薬の結合動力学も評価します。
製剤
この段階では、最終製品が開発され、生産、製剤化、包装されます。ポストプロダクションでは、製品の有効性と安全性を確保するために幅広い品質管理を行わなければなりません。製品が、私たちが考えている通りのものか、期待通りの性能を持っているか、不純物は含まれていないかなどです。これは日常的なアプリケーションと考えられているので、分析技術には堅牢で、簡単に実行でき、必要なスループットを得るために継続的に稼働することが求められます。
このような環境では、一般的にQA/QC操作にHPLC(高性能液体クロマトグラフィー)が使用されます。UHPLC(Ultra High Performance Liquid Chromatography)は、研究開発段階でよく使用されています。HPLCでは、シンプルにするために、UV検出器、またはシングル四重極型質量分析計を使用することが一般的です。しかし、特にワクチンや抗体医薬など高分子の治療薬を製剤する場合では、先に述べたような複雑さが加わるため、QA/QCでより詳細な特性評価が必要となり、完全な特性評価のために単独のHPLCだけでなくLC-MSも必要となります。プロセスの最終段階は、一般的に「製剤化と充填」と呼ばれています。これは、最終製品が混合され、使用のために準備され、出荷と使用までの保管のためにパッケージに入れられる工程です。
要約すると、ワクチンや抗体医薬など治療薬の製剤ワークフローの各段階で、分析技術が必要となります。主に(U)HPLCとLC-MSが主に使用されますが、ここでも、適切なHPLC装置、ケミストリー、質量分析システムについては、さまざまな選択があります。ゲノミクスなどの他のアプローチと組み合わせることで、迅速かつ効果的なワクチンや治療法の研究開発のための強力なツールセットを持つことができます。
追加情報
・Thermo Scientific™ Chromeleon™ クロマトグラフィーデータシステム(CDS)を、ワクチンや治療薬の研究・開発・製造において、効率的かつコンプライアンスを考慮した上で、どのように利用できるかについては、こちらをご覧ください。
・ラーニングセンターでは、バイオ医薬品の分析試験について詳しく説明しています。
ウイルスの構造と機能研究に関心のあるかた、ぜひこちらの資料をダウンロードして、詳しい活用例や解析結果をご覧ください。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。