LIMSの導入はどのように収益向上に貢献するか?
ラボ情報管理システム(LIMS)は、ラボ(研究所)の運用をサポートする、さまざまな機能を兼ね備えたソフトウエアシステムです。LIMSは製薬業、製造業、バイオ分析といった多様な分野において、品質管理システムとして導入されており、今後さまざまな業種のラボにとって、非常に重要な役割を発揮することになると考えられています。LIMSは、サンプルの情報や科学データ、そしてその結果を記録し、追跡するだけではありません。装置のメンテナンス、サンプルや人の動き、消耗品の管理に至るまで、ラボにおけるプロセス全体の能動的な管理を可能にします。LIMSを使用することで、ラボの管理者はそこで働くチームやラボの機能全体の効率を向上できるだけでなく、プロセス上で発生する問題を迅速に把握し、修正します。それにより、SOP(標準作業手順書)の順守を徹底することができます。LIMSを導入してそれを活用するラボは、より優れた科学技術を実現させるだけでなく、ビジネスにおける高い費用対効果も実感することができるでしょう。
LIMSは、私たちが日常使用しているソフトウエアと同様に、常に進化し続けています。最新のLIMSは、サンプルの追跡システムから、ラボのデジタル化を促進するためにさらに進化しており、現在ではラボのプロセス効率向上と、コスト管理の両面を支えるツールとなっています。LIMSの導入に関わる投資が事業の収益にもたらすメリットは、しばしば見過ごされがちです。ただ、LIMSを活用し、プロジェクトの結果レポートの作成といった、単純作業に要する時間を削減させることで、サンプル検査のための作業時間が短縮されます。それにより、ラボで働く科学者・研究者たちの時間を、本来の仕事でもある新しい科学技術の開発など、より付加価値の高い仕事にフォーカスさせることができるのです。このことは、さらに大きな事業メリットにつながるでしょう。
LIMS導入がもたらす、6つのコストメリット
LIMSを使用することによる経済的なメリットとして、以下の点が考えられます。
1. コンプライアンス強化の取り組み支援-規制対応が求められるラボにおいては、規制を順守しなかった場合、高額なペナルティが課せられる他に、評価のやり直しや、製品そのもののリコールにつながることもあります。そのため規制当局に対して、科学的なプロセスを用いて、データインテグリティやコンプライアンス順守を確実に実証することが重要です。LIMSを導入することで、規制当局に対してサンプルのデータ取得からレポートの作成まで、データの確実なトレーサビリティを実証できるだけでなく、装置の校正やメンテナンス、さらにはサンプルや、標準液・試薬の在庫が適切に使用されているかなど、オペレーターのトレーニング状況を追跡することができます。
2. データ入力ミスの削減-手作業によるデータ入力には、常にリスクが潜んでいます。入力したデータをダブルチェックなどによって誤入力のリスクを軽減することもできますが、それには不要な時間と人的コストがかかるでしょう。LIMSを使用することでプロセスを自動化し、データ入力ミスなどの人的エラーを無くすことができるのです。バーコードスキャンやバッチファイルのアップロードによる電子的なサンプルの識別は、データの誤入力を防ぐことができます。さらに、各サンプル・容器・試薬にユニークな識別子を割り当ててスキャンすることによって、サンプルの移動に伴う入力ミスを軽減できます。
3. 検索機能の強化-LIMSを活用することで、ラボで働く科学者たちは自分の時間を無駄にすることなく、必要な情報をすぐに利用できるようになります。手書きのメモやエクセルなどによるデータ管理では、必要な情報を素早く検索するのは難しいことがあるでしょう。LIMSを使うことで、個別のサンプルや複数のサンプルの情報を、検索機能を使ってすぐに確認することができるようになるのです。
4. 既存の(そして今後の)ソフトウエアとの連携-LIMS以外のソフトウエアをラボ内で使用しているケースも多いかと思います。LIMSは、各システム間の情報の流れを合理化することで、収益にも影響するようなプロセスを自動化することができます。例えば、CRO(医薬品開発業務受託機関)は、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)システムを使って顧客を管理している場合があります。製造業においては、ERP(統合基幹業務システム)を活用して、ビジネスを管理しているかもしれません。最新のLIMSではAPIを利用して、こうしたソフトウエアと連携させることができます。この双方向に連携するLIMSのインターフェースにより、サンプルの発送や請求処理も自動的に通知することができます。
5. 試薬と消耗品の追跡 – 試薬や消耗品がラボに届き、LIMSに登録されます。それ以降は、LIMSが各試薬や消耗品の使用期限を監視し、再発注が必要な時期を事前に通知してくれます。LIMSは試薬や消耗品の在庫を正確に把握しているため、必要以上の発注によるコスト増を防ぐことができます。またそれにより、作業の遅れやプロジェクトの延長の原因にもつながるような、予想外の試薬の在庫不足も防ぎます。さらに、その各試薬がいつ、どのように使用されたかを記録することによって、各サンプルと試薬の状況を正確に把握することができます。
6. 装置利用の最適化-LIMSは実験がいつ予定されているのかを表示しています。ラボの管理者はLIMSを使用し、試験プランをレビューし、スケジュールを作成したりすることによって、使用する装置の最適化を実現することができます。また、LIMSは機器に必要なメンテナンスと、装置の状態を記録し続けます。それによってラボ管理者は、それらを参考にしながら予めメンテナンス記録を作成することができ、予期せぬ装置のダウンタイムを回避することができます。
LIMSを導入することで、どのようにラボの効率・品質など全体的なパフォーマンスが向上するか、また、そこにかかる人的・経済的コストの削減に役立つか、基本的な例を一部ご紹介いたしました。詳細は、サーモフィッシャーサイエンティフックのLIMSソリューションをご覧ください。
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