従来のモニタリングにおける課題

単クローン性ガンマグロブリン血症や多発性骨髄腫における課題

多発性骨髄腫においては、検査値によって病気の状態が測定可能であるという概念に基づいて単クローン性タンパク質のモニタリングが行われます。

骨髄腫を有する患者さんにおいて、下記の基準を上回る単クローン性タンパク質が検出される場合、国際骨髄腫作業部会(IMWG)はタンパク質量の定期的なモニタリングを推奨しています1


血清タンパク電気泳動(SPEP): 10 g/L (1 g/dL)以上

または

尿タンパク電気泳動(UPEP): 200 mg/24時間尿以上


SPEPやUPEPでタンパク質量が測定できない場合、腫瘍由来の血清遊離L鎖(free light chain, FLC)が100 mg/L以上かつ血清FLC比に異常がある患者さんでは、IMWGガイドラインに従って血清FLC検査によって病態をモニタリングすることができます。

単クローン性ガンマグロブリン血症や多発性骨髄腫においては、いくつかの理由により、従来の方法によるモニタリングが困難な場合があります2

 

感度

特に疾患の初期段階において、電気泳動法は単クローン性タンパク質レベルのわずかな変化を検出するのに十分な感度が得られないことがあります。これは偽陰性の原因となり、潜在的な疾患の発見や治療開始の遅れにつながります2

定量性

電気泳動法では、いくつかの問題が生じやすいことが知られています。例えば単クローン性タンパク質が他の血清タンパク質と複合体を形成して泳動される可能性があり、定量化を困難にします。これに加えて、検体中のタンパク質の沈殿、色素の飽和、非直線性、そしてゲル中における幅広いピークや複数のピークの存在などにより、単クローン性タンパク質の定量化は非常に困難となります。

解釈

SPEPおよびIFE(免疫固定法)では、タンパク質の検出有無の判定を主観的な解釈に頼るため、わずかな変化を見逃したり、バックグラウンドノイズとして解釈したりすることがあります。これは不正確さの原因となり、分析結果の質に影響を及ぼす可能性があります3,4,.5

変動性と主観性

SPEPやIFEの結果の解釈においては、ばらつきの大きさや主観性の強さも課題として挙げられます。検査担当者や担当医によって解釈にばらつきが生じることで、各施設間における結果の一貫性がなくなる可能性があります。検査結果に一貫性がない場合、タンパク質レベルの変化を解釈することが困難になる可能性があるため、患者さんをモニタリングする際に特に注意を要する問題であると言えます3,4

膨大な時間と労力

SPEPとIFEは時間と労力を要します。検体の分析には迅速さが必要となるほか、結果の確認や経時的変化の検出のために、繰り返しの検査が必要となる場合があります。これは臨床検査機関のリソースに対する負担となり、患者さんの医療費を増大させる可能性が出てきます3,4

FREELITE製品
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FREELITE製品

血清中の遊離L鎖(フリーライトチェーン、FLC)を測定することで、多発性骨髄腫などの単クローン性ガンマグロブリン血症の診断補助にお役立ていただけます


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略語表
 
FLC

遊離L鎖(free light chain)

IFE

免疫固定法(immunofixation electrophoresis)

IMWG

国際骨髄腫作業部会(international myeloma working group)

SPEP

血清タンパク電気泳動法(serum protein electrophoresis)

UPEP

尿タンパク電気泳動法(urine protein electrophoresis)

References
1. Kumar S, et al. International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma. Lancet Oncol 2016; 17:e328-46
2. Keren DF & Schroeder L. Challenges of measuring monoclonal proteins in serum. Clin Chem Lab Med 2016; 54:947-961
3. Prisi S, et al. Unraveling the Possibilities of Monoclonal Protein Migration, Identification, and Characterization in SPEP on Capillary Zone Electrophoresis. J Lab Physicians 2022; 14:505-510
4. Katzmann JA, et al. Serum reference intervals and diagnostic ranges for free kappa and free lambda immunoglobulin light chains: relative sensitivity for detection of monoclonal light chains. Clin Chem 2002; 48:1437-1444 https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2020.625753
5. Dejoie T, et al. Responses in multiple myeloma should be assigned according to serum, not urine, free light chain measurements. Leukemia 2019; 33:313-318