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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 細胞培養・イメージング / 【やってみた】実験はちょっとしかやっていませんが、ご応募いただいたアイデアにお答えします

【やってみた】実験はちょっとしかやっていませんが、ご応募いただいたアイデアにお答えします

Written by LatB Staff | Published: 06.02.2022

「やってみたシリーズ アイデア募集イベント」に多くのご応募をいただきありがとうございました!皆さまからいただいたアイデアについて社内で検討し、トランスフェクション試薬のインキュベーション時間やROX補正(ピペッティング誤差・反応液飛び散り・反応液中の気泡・インク汚れ)についてBlogの記事として公開してきました。

今回は、実験をやってみるところまでには至りませんでしたが、弊社テクニカルサポートスタッフの知識・経験を結集させ、ご応募いただいたアイデアにお答えします。

はじめに

今回お答えする4つのアイデアと応募者の方のハンドルネームをご紹介します。

Narupiyoさん
ゲルを逆さまにセットしてしまったら、ゲルからDNAがさようならする前であれば戻れるのでしょうか?アガロースゲル電気泳動の電場の向きを変えると、核酸を行ったり来たりさせることができたりしますか?

Narupiyoさん
PCRのマスターミックスに、はじめからアガロースゲル電気泳動用のローディングバッファーを加えてPCR反応できませんか?

さとしさん
飲酒しながらエタノール沈殿、睡眠不足でRNA抽出すると実験結果に影響出ますか?

かとえくわひろさん
ウェスタンブロッティングのPVDF膜の親水化はメタノールじゃなきゃダメですか?

お答え

「ゲルを逆さまにセットしてしまったら、ゲルからDNAがさようならする前であれば戻れるのでしょうか?アガロースゲル電気泳動の電場の向きを変えると、核酸を行ったり来たりさせることができたりしますか?」

アガロースゲル電気泳動で逆方向にしてしまったらどうなるか、DNAを行ったり来たりさせられるのか、弊社のInvitrogen™ E-Gel™ プレキャストアガロース電気泳動システムのリバース泳動機能を利用してやってみました。材料などは、下記の過去記事と同様です。

【やってみた】アガロースゲル電気泳動でDNAが分離していく動画を撮影してみた
まずは、動画をご覧ください。

動画プレーヤー
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ボリューム調節には上下矢印キーを使ってください。
1. アガロースゲル電気泳動
0:17

サンプルをアプライするウェルの上までDNAが逆流したことが見えたでしょうか?その後も、通常泳動機能とリバース泳動機能を切り替えることで、DNAを行ったり来たりさせることができました。
※実際は、通常泳動機能とリバース泳動機能の切り替えの設定の間はバックライトが消えて暗くなります。今回はその暗くなった部分を動画編集でカットしております。

ゲルを正しい向きとは逆さまにセットしてしまった場合、DNAがゲルの中に存在し、泳動バッファーの藻屑となる前であれば、動画の通り正しい方向へ戻すことが可能です。泳動槽の種類にもよるかと思いますが、ゲルの向きを変える、もしくは、電場の方向を切り替えることで上記の操作が可能です。Narupiyoさんのような着想をもとに、実用化されている技術も実はございます。パルスフィールドゲル電気泳動(Puls-Field Gel Electrophoresis; PFGE)というもので、大きい分子量(数十kb)のDNA断片を分画する方法の1つです。通常のアガロースゲル電気泳動は、単一方向へ単一電場をかけることで、DNAの分子量が小さいものから大きいものへとふるい分けする方法ですが、数十kb以上のDNA分子を分画することは難しいです。PFGEは、2つの異なる方向から電場の向きを切り替えることで、DNA分子を方向転換させながら電気泳動します。このことにより、数kbから十数Mb程度の高分子DNAを分画することが可能となります。PFGEの1つである、Field Inversion Gel Electrophoresis(FIGE)は、まさにNarupiyoさんと同じ着想の方法です。電場の向きを定期的に反転させ続け、数百 kb程度のDNA分子を分画することができます。さらに、Zero Integrated Field Electrophoresis(ZIFE)では、電場の向きを定期的に反転させ続けることに加え、電場の強さも変化させるという、FIGEの発展型となる方法もございます。

「PCRのマスターミックスに、はじめからアガロースゲル電気泳動用のローディングバッファーを加えてPCR反応できませんか?」

素晴らしいアイデアありがとうございます!当社でもお客さまに少しでも便利に実験を進めていただきたいという思いから、既にそのような商品を開発・販売しております。例としてここには、下記の2つの製品をご紹介させていただきます。

Invitrogen™ Platinum™ II Hot-Start Green PCR Master Mix
Thermo Scientific™ DreamTaq Green PCR Master Mix

両試薬ともに2X濃度でのご提供となり、お好みのプライマーペア・テンプレートDNAと混合してPCRを実施します。PCR後は、ローディングバッファーとまぜることなく、ゲルに直接アプライ可能です。PCR産物をアガロースゲル電気泳動する際に、一手間省きたいといった場面でご利用いただくと良いかもしれません。

「飲酒しながらエタノール沈殿、睡眠不足でRNA抽出すると実験結果に影響出ますか?」

エタノールを摂取しながらエタノール沈殿とは洒落が効いていて面白いアイデアだと思いました!しかし、アルコールの影響により、注意力・情報処理能力・判断力などが低下するので実験精度は落ちるのではないかと思われます。また、睡眠不足や疲労時も同様に、正確な実験操作が難しくなり、通常時と比較して良い結果を得ることが難しくなると考えます。健康第一で実験に取り組みたいものですね。なお、実験室にあるエタノールは酒税法上、飲用不可となっておりますので、決してお飲みにならないようにしてください。

「ウェスタンブロッティングのPVDF膜の親水化はメタノールじゃなきゃダメですか?」

確かに親水化は本当にメタノールじゃないとダメなのか?と疑問に思うところですね。私たちも、廃棄や安全性の面でメタノールよりも扱いやすいエタノールの使用を検討したことがあります。具体的にはPVDF膜の親水化処理と転写バッファーの調製にエタノールとメタノールの両方を使い、HEK293細胞のGAPDHをウェスタンブロッティングで検出した結果を比較しました(図1)。

WesternBlotting_pvdf

その結果、エタノールを使用してもメタノールと比べて遜色ないレベルでGAPDHのバンドを検出できました。もちろん、検証実験としては不十分ではありますが、その後、私たちのラボでは、基本的にエタノールで親水化処理して、転写バッファーにもエタノールを使用しています。今のところ、メタノールを使用していた時と比べて、特に検出効率が落ちたという報告は出ておりません。また、下記の文献ではイソプロパノールでも同等の結果が得られたと報告されています。

Electrotransfer of proteins in an environmentally friendly methanol-free transfer buffer.
Analytical Biochemistry 373 (2008) 377–379

実験条件・装置によっても異なることが考えられるため、エタノールやイソプロパノールをPVDF膜の親水化にご使用になる場合は、メタノールと同様の結果が得られることをあらかじめご確認ください。

いかがでしたでしょうか。

ご応募いただいた全てのアイデアに、実験をやってみてお答えすることは難しいのですが、今回は弊社テクニカルサポートスタッフの知識・経験を活かしてお答えさせていただきました。かとえくわひろさん、さとしさん、Narupiyoさん、【やってみた】シリーズのアイデアをご応募いただき、本当にありがとうございました!

当社ではRNA抽出やリアルタイムPCR、他にも細胞培養、ウェスタンブロッティングなど、実際に実験(実習)を行いつつ学べる各種ハンズオントレーニングを開催しています。これから新しい実験を始められる方、より理解を深めたい方はぜひご参加ください!

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研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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