IC 分析方法や分析のコツ FAQ


溶離液

溶離液の流量が変化したときの影響を教えてください。

溶離液の流量を変えるとピークの保持時間、圧力が変化することはよく知られていますが、ピーク高さ、ピーク面積、理論段数も流量の変化によって変化します。
特に面積は流量の増加に伴い顕著に低下します。
そのため流量を変えた場合は、必ず検量線を作り直して定量を行う必要があります。
流量の増加により圧力が上がるとカラムやサプレッサーなどにかかる物理的な負荷も大きくなることに留意してください。

ピーク保持時間
ピーク高さ
ピーク面積

Na2CO3とNaHCO3の溶離液のストック溶液について

水は18MΩ以上の超純水で、十分に脱気したものを使用します。脱気を十分にすることで、溶液中に溶け込んでいる気泡がポンプヘッドに入りノイズの原因となることを防ぎます。

 

使用する試薬類

Na2CO3 特級 粉末 500 g
NaHCO3 特級 粉末 500 g

 

Na2CO3とNaHCO3混合溶液の溶離液はストック溶液をあらかじめ調製しておき、使用時にこれを希釈します。ストック 溶液は密栓しておくと、2~3 ヶ月間の保存が可能です。ストック溶液の濃度はカラムによって異なります。下記の表を参照 のうえ、Na2CO3粉末とNaHCO3粉末を必要量秤量し、超純水を加えて溶かし全量500 mLとします。

 

炭酸系陰イオン分析用カラムと標準溶離液

カラム 溶離液の濃度 ストック溶液の濃度 Na2CO3の量 NaHCO3の量 ストック液の全量
IonPac AS12A 2.7 mmol/L Na2CO3 0.27 mol/L Na2CO3 14.31 g 1.26 g 500 mL
0.3 mmol/L NaHCO3 0.03 mol/L NaHCO3
IonPac AS4A-SC  1.8 mmol/L Na2CO3 0.18 mol/L Na2CO3 9.54 g 7.14 g
1.7 mmol/L NaHCO3 0.17 mol/L NaHCO3
IonPac AS14 3.5 mmol/L Na2CO3 0.35 mol/L Na2CO3 18.55 g 4.20 g
1.0 mmol/L NaHCO3 0.10 mol/L NaHCO3
IonPac AS9-HC 9.0 mmol/L Na2CO3 0.90 mol/L Na2CO3 47.70 g ――――
IonPac AS14A 8.0 mmol/L Na2CO3 0.80 mol/L Na2CO3 42.40 g 4.2 g
1.0 mmol/L NaHCO3 0.10 mol/L NaHCO3
IonPac AS22 A* 4.5 mmol/L Na2CO3 0.45 mol/L Na2CO3 23.85 g 5.88 g
1.4 mmol/L NaHCO3 0.14 mol/L NaHCO3
B* 4.5 mmol/L Na2CO3 0.45 mol/L Na2CO3 23.85 g 4.2 g
1.0 mmol/L NaHCO3 0.10 mol/L NaHCO3
IonPac AS23 A* 4.5 mmol/L Na2CO3 0.45 mol/L Na2CO3 23.85 g 3.36 g
0.8 mmol/L NaHCO3 0.08 mol/L NaHCO3
B* 4.5 mmol/L Na2CO3 0.45 mol/L Na2CO3 23.85 g 2.1 g
0.5 mmol/L NaHCO3 0.05 mol/L NaHCO3

*A カラム温度30℃の条件
*B カラム温度35℃の条件


前処理

どのような成分を含むサンプルがカラムや装置を劣化させますか?

カラムやシステムを劣化させる成分とその除去方法を紹介します

劣化成分  原因と症状  除去方法 
微粒子     配管・カラムのつまり  0.45 μm以下の孔径のメンブラン フィルターでろ過 
 圧力の上昇
可溶性高分子  界面活性剤   イオン交換体に吸着  固相抽出(逆相系) 
 保持時間が変わる 
タンパク質   イオン交換体に吸着  変性させて不溶化して遠心分離 
 ピーク形状の異常 固相抽出 
  限外ろ過 
油分   イオン交換体に吸着  液液抽出
  ピーク形状の異常  固相抽出(逆相系)
染料   イオン交換体に吸着  固相抽出(逆相系) 
 保持時間が変わる 
金属イオン     金属イオンと錯体を形成 アルカリ沈殿 
 有機酸・リン酸の感度低下  固相抽出(イオン交換樹脂、錯形成剤)
 サプレッサーの劣化   
有機溶媒     イオン交換体の破損  極性溶媒;カラム取扱説明参照 
 ピーク形状の異常 無極性溶媒;液液抽出および固相抽出 
 保持時間の急な変化   

どのような成分が含まれているかわからない未知試料を分析する際の注意を教えてください。

未知試料の確認方法

目視で確認

  • さらさらの液状である
  • 沈殿や浮遊物がない
  • 無色透明である

臭いで確認

  • 有機溶媒臭やオイル臭がない

軽く振って確認

  • 泡立たない

pHを確認

  • pH4-10の範囲である
    (使用可能pH範囲が0-14であるThermo Scientific Dionex カラムは劣化 はしないが、イオン濃度が高いためピーク形状が悪くなる場合がある)

 

溶離液と混合

  • 沈殿の生成や着色がない

このような試料は処理してから測定に用いる

  • 泡立つ
  • 溶離液と混ぜると濁る
  • 溶離液と混ぜると2層に分離する

前処理用カートリッジ OnGuardIIについて教えてください

OnGuardⅡ(オンガードⅡ)カートリッジは、イオンクロマトグラフのアプリケーションにおいて問題となる試料中の界面活性剤、フェノール、金属、疎水性物質、あるいはマトリクスとなる陰イオン、陽イオンなどを簡単に除去するための使い捨てタイプの試料前処理カートリッジです。

  官能基 交換容量 主な用途
OnGuardⅡ RP ジビニルベンゼン SLS 1000ppm 5mLを98%除去可能(1cc) 芳香族染料、炭化水素
界面活性剤、高級脂肪酸
などの疎水性物質の除去
OnGuardⅡ Ag Ag+型スルホン酸塩 1cc:2.0~2.2meq
2.5cc:5.0~5.5meq
ハロゲン、CrO4-、CN
S2-、SCNなどの除去
OnGuardⅡ P ポリビニルピロリドン pH3.7で6meqのリグニンを除去可能(1cc) フェノール類、タンニン酸、リグニン、アントシアン、アゾ染料、フミン酸
などの除去および濃縮
OnGuardⅡ H スルホン酸 1cc:2.0~2.5meq
2.5cc:5.0~5.5meq
アルカリ土類金属
遷移金属などの陽イオンの除去
pH調整
OnGuardⅡ A HCO3-型4級アミン 1cc:0.7meq
2.5cc:1.75meq
多価陰イオンの除去
pH調整
OnGuardⅡ Ba Ba+型スルホン酸塩 1cc:2.0~2.2meq
2.5cc:5.0~5.5meq
SO42-の除去
OnGuardⅡ M イミノジ酢酸 1cc:0.4meq
2.5cc:1.0meq
遷移金属の除去および濃縮
OnGuardⅡ Ag/H Ag+型スルホン酸塩/スルホン酸 Ag部分:4.5meq
H部分:0.8meq
ハロゲン、CrO4、CN
S2-、SCN および陽イオン(Ag)などの除去
OnGuardⅡ Ba/Ag/H Ba+型スルホン酸塩/Ag+型スルホン酸塩/スルホン酸 Ag部分:2.2-2.6meq
Ba部分:2.2-2.6meq
H部分0.8meq
SO42-、ハロゲン、CrO4、CN、S2-、SCN および陽イオン(Ag)などの除去

pH範囲:OnGuardⅡP以外のカートリッジはpH0-14 OnGuardⅡPはpH1-10

溶媒耐性:すべてのカートリッジでHPLC溶媒100%使用可能

前処理用カートリッジ OnGuardIIについて教えてください

OnGuardⅡ(オンガードⅡ)カートリッジは、イオンクロマトグラフのアプリケーションにおいて問題となる試料中の界面活性剤、フェノール、金属、疎水性物質、あるいはマトリクスとなる陰イオン、陽イオンなどを簡単に除去するための使い捨てタイプの試料前処理カートリッジです。

  官能基 交換容量 主な用途
OnGuardⅡ RP ジビニルベンゼン SLS 1000ppm
5mLを98%除去可能(1cc)
芳香族染料、炭化水素
界面活性剤、高級脂肪酸
などの疎水性物質の除去
OnGuardⅡ Ag Ag+型スルホン酸塩 1cc:2.0~2.2meq ハロゲン、CrO4-、CN-、
2.5cc:5.0~5.5meq S2-、SCNなどの除去
OnGuardⅡ P ポリビニルピロリドン pH3.7で6meqのリグニンを
除去可能(1cc)
フェノール類、タンニン酸、リグニン、アントシアン、アゾ染料、フミン酸
などの除去および濃縮
OnGuardⅡ H スルホン酸 1cc:2.0~2.5meq アルカリ土類金属
2.5cc:5.0~5.5meq 遷移金属などの陽イオンの除去
  pH調整
OnGuardⅡ A HCO3-型4級アミン 1cc:0.7meq 多価陰イオンの除去
2.5cc:1.75meq pH調整
OnGuardⅡ Ba Ba+型スルホン酸塩 1cc:2.0~2.2meq SO42-の除去
2.5cc:5.0~5.5meq
OnGuardⅡ M イミノジ酢酸 1cc:0.4meq 遷移金属の除去および濃縮
2.5cc:1.0meq
OnGuardⅡ Ag/H Ag+型スルホン酸塩/スルホン酸 Ag部分:4.5meq ハロゲン、CrO4-、CN-、
H部分:0.8meq S2-、SCN および陽イオン(Ag)などの除去
OnGuardⅡ Ba/Ag/H Ba+型スルホン酸塩/Ag+型スルホン酸塩/スルホン酸 Ag部分:2.2-2.6meq SO42-、ハロゲン、CrO4、CN、S2-、SCN および陽イオン(Ag)などの除去
Ba部分:2.2-2.6meq
H部分0.8meq

pH範囲:OnGuardⅡP以外のカートリッジはpH0-14 OnGuardⅡPはpH1-10

溶媒耐性:すべてのカートリッジでHPLC溶媒100%使用可能

使用方法

  1. シリンジを用いて洗浄水で洗浄
  2. 試料をシリンジに取り、最大流量以下で通液
  3. 初期試料は破棄し、その後を検液とする

導入量・サンプルループ

試料導入量を変更する方法をおしえてください。

試料を導入する方法(注入モード)は Fullと Partialの2種類があります。

 

<1>Full
注入ループ全体が試料液で充填されます。したがって、注入量は注入ループと一致します。
高い精度が必要な場合にお勧めします。
<2>Partial
注入ループの一部のみが試料液で充填されます。したがって、注入量は注入ループの容量よりも少なくなります。
さまざまな量の注入をおこなう場合にお勧めします。*注入ループは注入量の2倍の量が必要です。

 

*注入モードを調べる方法
装置メソッドを開き、サンプラの注入モードのタブを選択すると注入モードが確認できます。

1. サンプルループを交換します。

  • 既存のサンプルループ容量以上を導入する場合、サンプルループを大きいものに交換します。
  • いまより導入量少なくしFullで測定する場合、サンプルループを小さいものに交換します。
  • いまより導入量少なくしPartialで測定する場合、基本的にサンプルループを交換する必要がありません。

通常のシステムでは標準で25μLのサンプルループがついています。

 

2. オートサンプラーの『ループサイズ設定値』を変更します。(サンプルループを変更していない場合、この工程は不要)
1. サービスマネージャ画面で装置構成をクリックします。

2. AS-AP オートサンプラーをダブルクリックします。

3. オプションのタブを開き、ループ容量を変更します。

3. シーケンスの装置メソッドの導入量を変更する
シーケンスの導入量欄を実際に導入する容量に変更してください。

サンプルループを購入したいのですが?

下記部品を準備していただき、お客様ご自身で作製していただきます。

  1. PEEKチューブ オレンジ、ブルー、グリーンのいずれか
  2. チューブカッター 本体標準付属品の中に入っています。
  3. ボルト、ダブルコーンフェラル用 2ヶ
  4. フェラル、ダブルコーン 2ヶ 3)とセットで使用します。

チューブカッターで1) のPEEKチューブを必要量の長さにカットします。 カットしたチューブの両端に3) 4) のボルトとフェラルを取り付け、既存のループと交換します。

PEEKチューブの長さはどのくらいにカットしたらよいのでしょう?

PEEKチューブの内径より計算します。下記表を参照してください。

  直径(mm) 半径(mm) LOOP容量
50(μL) 100(μL) 200(μL) 250(μL)
ブラック 0.25 0.125 102 204 208 510
ブルー 0.33 0.165 58.5 117 234 292.4
オレンジ 0.51 0.255 24.5 49 98 122.4
グリーン 0.76 0.38 11 22.1 44.1 55.1

単位:cm

注入量を少なくすることはできますか?

可能です。 次の2つの方法があります。

  1. サンプルループを小さいものに交換する
    例)PEEKチューブ黒(内径0.25mm)を20.4cmにカットすると10μLになります。
  2. パーシャルモードで注入する。(オートサンプラーAS-APを使用している場合)
    装置メソッドでパーシャルモードに設定します。
    シーケンスの容量の欄の数値を実際のループサイズ 未満の値にすれば設定した注入量を導入できます。