花粉症は、花粉が原因で引き起こされるアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などのアレルギー疾患の総称です。代表的な症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみです。
春の花粉症の主な原因はスギやヒノキの花粉です。そのほか、ハンノキ(榛の木)、シラカンバ(白樺)、イネ科の花粉なども原因となります。
同じ花粉症でも、原因となる花粉の種類、症状の強さや起こる時期は人によってさまざまです。何が花粉症の原因なのか、アレルギー検査で調べることができます。アレルギーかも?と思ったら医師に相談しましょう。
日本アレルギー学会運営サイトにて、全国の拠点病院やアレルギー専門医を検索できます。
花粉症の症状は、繰り返すくしゃみや鼻づまり、水のような鼻水、目のかゆみ・赤くなるなど目や鼻を中心に出るのが特徴です。
また、ハンノキやシラカンバなどのブナ目花粉症では、咽喉頭症状(のどの症状)や咳もみられます。
鼻:くしゃみ、さらっとして水のような透明な鼻水、鼻づまり、鼻のかゆみ
目:目のかゆみ、ごろごろする(異物感)、目やにが出る、目が赤くなるなど
のど:イガイガする、かゆみ、痛み、違和感など
春の花粉症の原因はスギ花粉だけではありません。ヒノキ科のヒノキ、ブナ目カバノキ科(ハンノキ、シラカンバ、オオバヤシャブシ)、イネ科(カモガヤ、ハルガヤなど)の花粉も花粉症の原因となります。
春の花粉症は、樹木花粉では特に1月~6月まで注意が必要で、北海道や長野県などシラカンバの地域では6月まで注意が必要です。
カモガヤ、ハルガヤなどのイネ科花粉では4月から秋にかけて長期間の注意が必要です。
植生や地域によって飛散時期は若干異なります。
* 北海道札幌市花粉カレンダー 北海道立衛生研究所http://www.iph.pref.hokkaido.jp/ より
子どもは自分で症状を訴えられない場合もあり、花粉症が見過ごされやすいです。このようなしぐさや症状は花粉症に関連しているかもしれません1)。
近年では花粉症の低年齢化が進んでおり、2019年の鼻アレルギーの全国疫学調査では 5-9歳のスギ花粉症有病率は、2008年と比較し倍以上に増加、最も多い年代は10歳代で49.5%の有病率と報告されています2)。症状をうまく伝えることが難しい子供のしぐさは花粉症のサインかもしれません。気になることがあれば医師へ相談しましょう。
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目や鼻をこするしぐさ、瞬きが増える、鼻をすする、鼻出血、くしゃみ、水性の鼻水、いびき、口呼吸
花粉-食物アレルギー症候群(PFAS:pollen-food allergy syndrome)は、花粉症に合併する食物アレルギーで、果物や野菜を食べた後に口・唇・のどなどにイガイガ感やかゆみ、腫れがみられ口腔アレルギー症候群(OAS:oral allergy syndrome)とも呼ばれます。ハンノキやシラカンバ花粉ではリンゴやモモ、大豆(豆乳)などの食物で症状を起こすことがあります。関連する食物は医師の診断を受けたうえで適切な方法で避け、原因となる花粉対策をすることが重要です。
特定の野菜や果物を摂取した直後~1時間以内に、口の中がかゆくなったり、のどがイガイガして腫れたりすることが多く、息苦しくなったりするなどの症状が現れることもあります。
口のかゆみ、くちびるや舌など口周りの腫れ
のどのイガイガ(チクチク)やかゆみ、腫れ
気になる症状があればアレルギーチェックしてみよう
あなたのアレルギー症状をチェック
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治療の基本は薬物療法とアレルギーの原因(アレルゲン)の除去、可能な限り避ける生活をすることです。処方された薬物を毎日、定期的に(用法・用量を守って)使用しながら、原因となるアレルゲンがどの季節、どんな場所に存在しているかを知り、できる限りアレルゲンを体に入れないように過ごす環境づくりを心がけましょう。
症状の原因となるアレルゲンは血液検査で調べることができます。アレルギーの原因や診断は、検査結果をもとに医師が総合的に判断します。
アレルゲン免疫療法は、以前は減感作療法とも呼ばれ、アレルギーの原因となっているアレルゲンエキスを注射(皮下免疫療法)や舌下(舌下免疫療法)から身体に入れていく方法です。アレルゲンに対する反応を弱めていく方法ですので、長い期間(3~5年が推奨)の治療が必要ですが、治療の中で唯一アレルギーを治すことができるかもしれません。治療時期はスギ花粉の場合は、スギ花粉が飛散していない時期(6月~11月頃)に開始します。一方、ダニが原因によるアレルギー性鼻炎の場合は時期に関わらず治療は始められます。原因の確定診断や治療開始時期については、医師とご相談ください。
気になる症状があればアレルギーチェックしてみよう
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一年を通して注意が必要なアレルゲンとしてハウスダストがあります。ハウスダストは屋内にたまるホコリ(室内塵)のことで、主にダニ、ガ、ゴキブリ、カビ、ペットのフケなどが含まれています。ハウスダストはアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎だけでなく、ぜん息やアトピー性皮膚炎を引き起こしたり悪化させる原因となります。
ハウスダストに含まれるダニや昆虫、カビ、ペットのフケなどのアレルゲン物質が鼻や目、のど、皮膚などに接触したり吸い込んだりすることにより症状が現れます。
主な症状
鼻:くしゃみ、水のような鼻水、鼻づまり、鼻のかゆみ
目:目のかゆみ、ごろごろする(異物感)、目やにが出る、目が赤くなる
呼吸器:ゼーゼー、ヒューヒューして息苦しい、咳がつづく
皮膚:湿疹が悪化する
屋内環境にもさまざまな原因アレルゲンが潜んでいます。
アレルギーかも?と思ったら医師に相談しましょう。
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1) 耳鼻免疫アレルギー(JJIAO)37(1):17-20,2019
2) 鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症-2020年版(改訂第9版).ライフ・サイエンス.
3) 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会・海老澤元宏・伊藤浩明・藤澤隆夫監修.食物アレルギー診療ガイドライン2021年協和企画.2021;204-208.
本ウェブサイトの監修医のご紹介、ご担当ページの詳細はこちら
日本医科大学多摩永山病院
准教授・部長
後藤穣 先生
1991年日本医科大学医学部卒業。2004年より日本医科大学耳鼻咽喉科学講師、2011年日本医科大学耳鼻咽喉科学准教授、2014年日本医科大学多摩永山病院病院教授、2018年日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科学准教授、2022年より日本医科大学多摩永山病院耳鼻咽喉科学准教授。日本アレルギー学会常務理事・指導医、日本耳鼻咽喉科学会専門研修指導医、日本鼻科学会代議員・鼻科手術暫定指導医就任。
2023年7月時点