シーフード関連のアレルギーは、原因となるアレルゲン毎に①魚類、②魚卵、③甲殻類、軟体類、貝類でそれぞれ分けて考える必要があります。熱で変化しにくい性質のものが見られ、加熱調理済みの料理や加工食品にも注意が必要です。
魚類アレルギーの原因となる成分は、主に2つあります。ひとつは、水に溶けやすく、加熱してもアレルゲンとしての性質が失われにくい特性がある、パルブアルブミンと呼ばれるタンパク質です。このタンパク質が関連して、ある種の魚にアレルギーがある場合は、他の魚にもアレルギー反応(交差抗原性)を起こすことがあります1)。もうひとつは、コラーゲン成分です。コラーゲンは熱で変化しゼラチン状になってもアレルギーの原因となることがあります。
魚類アレルギーの人が問題なく食べられる魚と、アレルギーが起こる可能性のある魚は、単純に魚肉の色や魚の色からは判断できません2)。医師に相談の上、確認しましょう。
日本での魚卵アレルギーのほとんどはイクラが原因と報告されています3)。1歳から6歳までに発症する食物アレルギーのなかで、魚卵によるアレルギーは第2位として挙げられてます4)。イクラは数粒でも強いアナフィラキシーを起こすことがあります。
また、同じ卵でも、魚卵と鶏卵は異なります。そのため、必ずしも鶏卵アレルギーの人が魚卵に対して食物除去する必要はありません。
甲殻類、軟体類、貝類のアレルギーの原因となるタンパク質(トロポミオシン)は水に溶けやすく加熱してもアレルゲンとしての性質が失われにくい特性があります。
③-1:甲殻類のアレルギー
甲殻類アレルギーの代表的な食物としては、エビ、カニ、ロブスターが挙げられます。18歳以上の食物アレルギー原因物質として、小麦に次いで2番目に多いと報告されています4)。交差抗原性により、エビアレルギーの人はカニでもアレルギー症状がでる可能性が高いです。また、食べたことと、食後の運動が関連してアナフィラキシー症状(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)が起こることもあります5)。
③-2:軟体類のアレルギー
イカやタコのアレルギーを指します。
エビアレルギー患者さんがイカ、タコなどの軟体類、貝類で症状を示す割合は20%程度です6)。
③ー3:貝のアレルギー
アワビ、アサリ、カキ、ホタテなどによるアレルギーを指します。
貝類を食べて消化器に症状が出たときは、アレルギーのほかにも貝の毒素やウィルスの混入、細菌による症状の可能性があります7)。
①アニサキスとアレルギー8)
アニサキスは、イカ、タラ、サバなどに寄生する寄生虫で、食べた魚類にアニサキスが寄生していたことでじんま疹やアナフィラキシーなどのアレルギー症状を引き起こすことがあります。
②ヒスタミン中毒9)
マグロやサンマ、サバなどの赤身魚では、鮮度が落ちるとヒスタミンが多く蓄積されていきます。この物質はアレルギー反応を引き起こす刺激物質と同じで、そのような魚を食べることでアレルギーのような症状が起こることがあります。
魚を購入した際は速やかに冷蔵保存することや鮮度の低下した魚類の摂取をしないよう注意が必要です。
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アレルギーかも?と思ったら医師に相談しましょう。
日本アレルギー学会運営サイトにて、全国の拠点病院やアレルギー専門医を検索できます。
1) 海老澤元宏編.症例を通して学ぶ食物アレルギーのすべて改訂2版.南山堂.2018;204-205.
2) 海老澤元宏編.症例を通して学ぶ食物アレルギーのすべて改訂2版.南山堂.2018;206.
3) 海老澤元宏編. 症例を通して学ぶ食物アレルギーのすべて改訂2版. 南山堂. 2018;208-209.
4) 平成30年度食物アレルギーに関連する食品表に関する調査研究事業報告書(消費者庁)
5) 海老澤元宏編.症例を通して学ぶ食物アレルギーのすべて改訂2版.南山堂.2018;268-269.
6)日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会・海老澤元宏・伊藤浩明・藤澤隆夫監修.食物アレルギーハンドブック2018. 協和企画. 2018;39.
7) 海老澤元宏編.症例を通して学ぶ食物アレルギーのすべて改訂2版.南山堂.2018;272-273.
8) 海老澤元宏編.症例を通して学ぶ食物アレルギーのすべて.南山堂.2013;210-211.
9) 厚生労働省ホームページ ヒスタミンによる食中毒とは?(最終閲覧日2019年9月26日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130677.html
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独立行政法人国立病院機構 相模原病院
臨床研究センター センター長
海老澤元宏先生
1985年東京慈恵医科大学医学部卒業。国立小児病院医療研究センターレジデント、米国ジョンズ・ホプキンス大学臨床免疫学教室留学を経て、2000年より国立病院機構相模原病院小児科医長、2001年同臨床研究センター病態総合研究部長。現在は、国立病院機構相模原病院臨床研究センターでセンター長を務める傍ら、一般社団法人日本アレルギー学会理事長、日本小児アレルギー学会副理事長、Asia Pacific Association of Pediatric Allergy, Respirology & Immunology (APAPARI) 理事長も務めている。厚生労働省のアレルギー疾患対策推進協議会や消費者庁食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議では座長を務める。食物アレルギー分野の第一人者。
2023年10月時点