症状の原因となっているアレルゲンを避け、アレルギー症状を誘発させないために、検査を行ってアレルゲンの特定に役立てます。特定されたアレルゲンが食物アレルゲンであれば、適切な指導のもと原因食物を必要最小限に除去する、ダニアレルゲンであれば、室内の適切な管理をする、花粉のアレルゲンであれば、マスクや眼鏡の着用、室内に花粉を持ち込まないなど、アレルゲンに応じた対処につながります1)。
アレルギーの原因特定のために行われる検査には、血液検査、皮膚プリックテスト、食物除去テスト、食物経口負荷試験など、さまざまな種類があり、医師の判断で実施されます。(このサイトで紹介するのはそれら検査の一部です)
特異的IgE抗体検査
即時型アレルギーに関連するIgE抗体は血液中に存在しており特異的IgE抗体を測定するために血液検査を行います。
特異的IgE抗体を測定する血液検査では、どんなものがアレルギーの原因(アレルゲン)になっているかを調べます2)。
現在、保険適用されている特異的IgE抗体検査では、約200種類以上のアレルゲンに対する特異的IgE抗体を測定することができます3)。
特異的IgE抗体検査の検査結果は、多くの場合、特異的IgE抗体の量をクラス0~6といった7段階で表示します。クラス0を陰性、クラス1を疑陽性(陽性とは判定されない程度のIgE抗体が血液中に存在している)、クラス2以上を陽性と判定します。クラスが高いほうがIgE抗体の量が多いことを示しますが、クラスが高いからといって必ずしもアレルギー症状が現れるわけではありません。また値は症状の強さを示すものでもありません。特に、食物アレルゲンでは、特異的IgE抗体検査の結果がある程度高くても、その食物(アレルゲン)を食べてもアレルギー症状が出ない人もよくみられます1)。
特異的IgE検査はあくまで血液中に特異的IgE抗体があるかどうかを調べる検査であり、医師がアレルギーの診断をおこなう際の目安のひとつです。検査結果だけで判断することはよくありません。症状が誘発された状況などとあわせて判断することが大切で必ずアレルギー専門医に相談し、アレルギーかどうかを慎重に判断してもらいましょう。
血液検査には様々な種類があります
『卵白』『小麦』には、たくさんのタンパク質が含まれています。その中でも個々のタンパク質に対する特異的IgE抗体を調べることができるようになりました。アレルゲンコンポーネントと呼ばれるもので、より高い精度で症状との関連を確認することができます。
たとえば『卵白』のアレルギー検査結果が陽性で、鶏卵アレルギーの診断を受けた方でも、アレルゲンコンポーネントの『オボムコイド』というタンパク質の検査が陰性の場合、加熱卵であれば食べてもアレルギー症状が出ない可能性があります。鶏卵はそのものを食べるだけでなく多くの料理や加工食品に使用されています。この検査によって鶏卵を含む食品をすべて避けなければいけないか、調理の仕方で食べられる可能性があるかどうか確認することができます。
まだ新しい検査のため、調べられる対象は一部に限られます。【アレルゲンコンポーネント】の検査については、医師にご相談ください。
日本アレルギー学会運営サイトにて、全国の拠点病院やアレルギー専門医を検索できます。
このテストはアレルギーの原因として疑わしいアレルゲンエキスを一滴腕に乗せた後、専用の細い針で点状の傷をつけアレルゲンを皮膚に少量入れ、皮膚の変化を観察し特異的IgE抗体の存在を確認する検査です1) 。
血液検査と併用することもあります。まだ十分に血中に抗体が検出されない乳児においては高感度に特異的IgE抗体の存在を検査できる方法です4)。
PFASによる果物アレルギーの診断にPrick-to-Prick Test (そのものと判断してプリックテストを行う)が役立ちます。
主に食物アレルギーが関わっている「乳児アトピー性皮膚炎」の疑いがあるときに行うことがあります。湿疹のコントロールが上手くいかない場合に疑わしいアレルゲンを乳児あるいは授乳中の母親の食事から1週間程度完全に除去し、湿疹が改善するかどうか観察します。
このとき、医師は除去する食物や、期間を適切に設定します。
この試験によって湿疹が改善した場合は、原因食物を確定するために、疑いのある食物を実際に食べてみる試験を行います。
食物アレルギーの最も確実な診断方法です。この診断方法を熟知した食物のアレルギー専門医の指示のもとで原因と疑われる食物を食べ、アレルギー症状が出るかどうかをみます。この試験の主な目的は、原因アレルゲンの確認、安全に摂取できる量の確認、以前と比べアレルギー反応を起こさなくなっているかどうか(耐性化)の確認です。最初は少量の負荷から行い、徐々に増やしながら症状に注意し経過を観察していく方法をとります。
試験法は、本人も医師も食べたものをわかったうえで検査するオープン法と、心理的な反応を除くために本人はわからないようにするブラインド法があります。
食物経口負荷試験の実施前のリスク判定や実施時の負荷量の選択にアレルゲンコンポーネントの検査が参考になります。
アレルギーの受診と検査について詳しくはこちら
アレルギーかも?と思ったら医師に相談しましょう。
日本アレルギー学会運営サイトにて、全国の拠点病院やアレルギー専門医を検索できます。
1) 一般社団法人日本アレルギー学会ホームページ (最終閲覧日: 2019年10月03日) https://www.jsa-pr.jp/html/knowledge.html
2) 独立行政法人環境再生保全機構ホームページ (最終閲覧日: 2019年10月24日) https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/47/feature/feature02.html
3) 海老澤元宏監修.食物アレルギーのすべてがわかる本.講談社.2016;47.
4) 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会・海老澤元宏・伊藤浩明・藤澤隆夫監修.食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》.協和企画.2018;93-95.
5) 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会・海老澤元宏・伊藤浩明・藤澤隆夫監修.食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》.協和企画.2018; 81-84.
6) 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会・海老澤元宏・伊藤浩明・藤澤隆夫監修.食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》.協和企画.2018;100-110.
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独立行政法人国立病院機構 相模原病院
臨床研究センター センター長
海老澤元宏先生
1985年東京慈恵医科大学医学部卒業。国立小児病院医療研究センターレジデント、米国ジョンズ・ホプキンス大学臨床免疫学教室留学を経て、2000年より国立病院機構相模原病院小児科医長、2001年同臨床研究センター病態総合研究部長。現在は、国立病院機構相模原病院臨床研究センターでセンター長を務める傍ら、一般社団法人日本アレルギー学会理事長、日本小児アレルギー学会副理事長、Asia Pacific Association of Pediatric Allergy, Respirology & Immunology (APAPARI) 理事長も務めている。厚生労働省のアレルギー疾患対策推進協議会や消費者庁食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議では座長を務める。食物アレルギー分野の第一人者。
2023年10月時点