ナッツアレルギー

ナッツアレルギー

ナッツ類にはさまざまな種類が存在し、代表的な例としてはクルミ、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ1)などが挙げられます。

カシューナッツ、クルミなどのアレルギーは微量でも重い症状を引き起こすことがあります2),3)

ナッツ類とピーナッツの関係

ナッツ類にはアーモンド、カシューナッツ、クルミなど異なるさまざまな種類のものがありそれぞれに特徴は違います。

また、ピーナッツは豆の仲間で、名前には「ナッツ」と入っていても、いわゆるナッツ (木の実)類とは種類が異なります。

ナッツアレルギーであるという理由で、ひとくくりにしてすべてのナッツ類を除去したり、ピーナッツを除去する必要はありませんが、人によっては、ピーナッツやほかのナッツに対してもアレルギーを起こすことがあるため、医師による詳細な診断を受けることが望ましいです3),4)

クルミとペカンナッツの関係

さまざまあるナッツ類の中でも、クルミとペカンナッツ(ピーカンナッツとも呼ばれます)は、タンパク質の構造が近い種類です。(交差抗原性があると言います。)そのためクルミアレルギーとペカンナッツアレルギーは合併することが多いと言われています5)。いずれかのアレルギーと診断された場合には、注意が必要です。自己判断せず、医師へ相談ください。

カシューナッツとピスタチオの関係

さまざまあるナッツ類の中でも、カシューナッツとピスタチオはタンパク質の構造が近い種類です。(交差抗原性があると言います。)そのためカシューナッツアレルギーとピスタチオアレルギーは合併することが多いと言われています5)。いずれかのアレルギーと診断された場合には、注意が必要です。自己判断せず、医師へ相談ください。

クルミの食品表示義務化

ナッツ類によるアレルギーの症例数は増加傾向にあり、鶏卵、小麦に次いで、ピーナッツを抜き、第4位にクルミが原因食物としての上位に報告されています。鶏卵、牛乳、小麦の症例数が横ばいなのに対して、ナッツ類は増加傾向にあります。ナッツ類の中でも日本ではクルミによる症例が多く報告されたことから、令和5年3月9日に食品表示法が改正され、クルミは加工食品の特定原材料として表示が義務付けられることになりました6)。令和7年3月末までの経過措置期間を経て表示が義務化されます。カシューナッツとアーモンドは特定原材料に準ずるものとして表示が推奨されています。アレルギーと診断された方は、加工食品のアレルギー表示を確認して、誤食をふせぎましょう。アレルギー表示は、飲食店や量り売りのお惣菜や店内で調理をするようなものは対象外ですのでご注意ください。

ナッツアレルギーの症状

症状は皮膚症状、粘膜症状(目や鼻、口腔内)、呼吸器症状、消化器症状などさまざまです。ほとんどの場合は、原因食物を食べてから2時間以内に症状がおこります。クルミやカシューナッツなどアナフィラキシーショックなどの重篤症状を起こしやすい食物です。すべての症状が同時に起こるわけではなく、同じ患者さんでも原因食物を食べた際にでる症状は食べる量や患者さんの体調によっても異なります。

*皮膚症状…かゆみ、発赤、じんましん、血管浮腫など。

*粘膜症状…口の中のかゆみや違和感(イガイガ・チクチクする)、唇の腫れなど。

      鼻水、鼻づまり、くしゃみ。

      目のかゆみや充血、涙が出る。

*呼吸器症状…のどの違和感、かゆみ、しめつけを感じる。

       ゼーゼーヒューヒュー、呼吸困難など。

*消化器症状…気持ち悪い、吐き気、腹痛、下痢、血便など。

*その他症状…頭痛、眠気、意識障害、失禁、血圧低下、頻脈、徐脈。手足が冷たくなる。顔面蒼白など。

クルミアレルギー/カシューナッツアレルギーの診断

血液検査でクルミやカシューナッツが陽性でも食べて症状が出ない人がいます。アレルギーの診断には、血液検査の結果だけでなく食物経口負荷試験の結果など医師が総合的に判断します。

クルミの構成タンパクのひとつに『Jug r 1(読み方:ジャグ アール ワン)』、カシューナッツの構成タンパクのひとつに『Ana o 3(読み方:アナ オー スリー)』というタンパク質があります。これらは、全身症状との関連性が強いタンパク質として知られ、血液検査で『Jug r 1』が陽性の人は、クルミを食べて症状が出る可能性が高い人です。また『Ana o 3』も同様に全身症状との関連が強いため、血液検査で『カシューナッツ』が陽性の人はカシューナッツを食べて症状が出る可能性が高い人です。クルミやカシューナッツが陽性となった場合には、追加で『Jug r 1』や『Ana o 3』を検査し、より詳しく症状との関連を確認することを医師に相談しましょう。

この検査によってクルミやカシューナッツを食べたときに全身性の重篤な症状がおこりやすい方かどうかがわかります。『Jug r 1』や『Ana o 3』が陰性の場合には、食べても比較的リスクの低い方です。食物経口負荷試験に進んで、食べられるかどうかの確認をしましょう。

『Jug r 1』や『Ana o 3』が陽性の方は、加工食品のアレルギー表示も確認しながら誤って食べないように注意します。クルミ以外のナッツは必ずしも表示されていないこともあるので注意が必要です。ナッツそのものを食べるだけでなく、ナッツを含む可能性のある食品も多く存在します。保湿剤など皮膚に触れるものにナッツ類が使われていることもあるので注意しましょう。

『Jug r 1』について医師に相談しましょう

  日本アレルギー学会運営サイトにて、全国の拠点病院やアレルギー専門医を検索できます。

ナッツを含む可能性のある食品の例

洋菓子(アーモンドやココナッツなどは、洋菓子類の材料として使われることが多い1))ナッツオイルを使用した化粧品7)、ドレッシングに使用されることも多い8)

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アレルギーかも?と思ったら医師に相談しましょう。

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1) 厚生労働省科学研究班による食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017.海老澤元宏研究;26. 最終閲覧日:2023年11月14日)
https://www.foodallergy.jp/wp-content/themes/foodallergy/pdf/nutritionalmanual2017.pdf
2) Grabenhenrich L, et al.Anaphylaxis in children and adolescents:The European Anaphylaxis Registry.J Allergy Clin.Immunol; 2016;137:1128-37.
3) Bock SA, Munoz-Furlong A, Sampson HA. Fatalities due to anaphylactic reactions to foods. J Allergy Clin Immunol. 2001; 107:191–193. (III)
4) 海老澤元宏編.症例を通して学ぶ食物アレルギーのすべて改訂2版.南山堂.2018;230-231
5) 杉崎千鶴子ほか.アレルギー72(8),1032-1037.2023
6) くるみの特定原材料への追加及びその他の木の実類の取扱いについて.消費者庁食品表示企画課(最終閲覧日:2023年11月14日)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_230309_03.pdf
7) 海老澤元宏監修.食物アレルギーのすべてがわかる本.講談社.2016;82.
8) 海老澤元宏編.症例を通して学ぶ食物アレルギーのすべて改訂2版.南山堂.2018;196-199

監修医の紹介

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独立行政法人国立病院機構 相模原病院
臨床研究センター センター長
海老澤元宏先生

1985年東京慈恵医科大学医学部卒業。国立小児病院医療研究センターレジデント、米国ジョンズ・ホプキンス大学臨床免疫学教室留学を経て、2000年より国立病院機構相模原病院小児科医長、2001年同臨床研究センター病態総合研究部長。現在は、国立病院機構相模原病院臨床研究センターでセンター長を務める傍ら、一般社団法人日本アレルギー学会理事長、日本小児アレルギー学会副理事長、Asia Pacific Association of Pediatric Allergy, Respirology & Immunology (APAPARI) 理事長も務めている。厚生労働省のアレルギー疾患対策推進協議会や消費者庁食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議では座長を務める。食物アレルギー分野の第一人者。

2023年10月時点