あなたのアレルギー症状をチェック
ぜん息は、呼吸の際に空気の通り道である「気道」が狭くなり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」し始めて呼吸が苦しくなる病気です。ぜん息の方の気道は、慢性的な炎症を起こしていて、普段から刺激に敏感な状態にあります。日常生活中に何もなければ健常な方と何ら変わりがないのに、ちょっとした刺激が加わった際に気道が収縮して空気の通り道が狭くなり、突然、咳や呼吸困難を伴うぜん息発作を繰り返します。
ぜん息の特徴として呼吸するとき、のどの奥でゼーゼー、ヒューヒューと音がするぜん鳴があります。その他にも主に以下のような症状があります。
ぜん息は、アレルギー性鼻炎やアレルギー性皮膚炎と同じように主にアレルギー性疾患と考えられています。アレルギーを引き起こす原因物質であるアレルゲンを吸入して症状が現れるぜん息をアトピー型ぜん息といい、小児ぜん息のほとんどはアトピー型ぜん息で、成人になると年齢が高くなるにつれその割合は減少していくものの、40歳代でも8割以上、70歳代でも5割以上がアトピー型ぜん息であることが報告されています2,3)。
ぜん息発作を起こす原因はさまざまです。アトピー型ぜん息では、ダニやカビ、ペットの毛やフケ、昆虫(ガ・ゴキブリなど)のアレルゲン、風邪やインフルエンザなどの感染症、住環境、季節の変わり目の天候などがあげられます。
症状の主な原因アレルゲン | 発症や増悪の誘因の主な原因 |
---|---|
ダニ・ハウスダスト | 風邪やインフルエンザなどの感染症 |
ペット(イヌやネコなど) | 住環境 |
花粉 | 季節の変わり目の天候 |
カビ | ストレス |
ガ・ゴキブリ | 運動 |
たばこの煙 |
症状の原因となるアレルゲンは血液検査で調べることができます。
中村陽一先生
豊田地域医療センター
アレルギーセンター長
夜中や早朝に息苦しさや咳がある、運動した後の息切れが強い場合、風邪が治った後も咳が長引き、たんがからみ、呼吸をするとヒューヒュー・ゼーゼーといった音がなるなどの場合はぜん息の可能性があるので、呼吸器内科やアレルギー科を受診することをおすすめします。
ぜん息と診断され、医師の指示通りに吸入薬など服薬しているにもかかわらず症状が改善しない、悪化している、年々処方されるお薬の量や種類が増えてきている場合、ぜん息のコントロールが十分でない可能性があります。
そのようなときは、アレルゲンなどの環境要因に変化がないかなど、再度確認すると良いでしょう。以前は陽性でなかったアレルゲンに対する検査が新たに陽性になっていることもあります。特にここ数年、家で過ごすことが多かった方は、ダニ・カビ・ペット(イヌ・ネコなど)・昆虫(ガ・ゴキブリなど)に対して新たに陽性になっていないかを確認し、それらがぜん息の悪化因子となっている場合は、掃除や空気清浄機の設置などセルフケアが重要となってきます。
アトピー型ぜん息を引き起こす原因を調べる「IgE検査」は、医師がアレルギーの診断の際、参考にしています。
IgE検査は、IgEという抗体の値を調べる血液検査で、アレルギー体質か推定するため「総IgE」の値を調べるものや、特定のアレルゲンのみに反応する「特異的IgE」の値を調べるものがあります。
問診によって疑われたアレルゲンの特異的IgE抗体については、保険診療で1回13項目までを上限として定量検査での測定が可能です。ただし、問診をしても原因がわからない場合は、半定量ながら一度に多項目のクラス判定ができるスクリーニング検査での測定も可能です。
なお、日本喘息学会の「喘息診療実践ガイドライン2023」4)では、ぜん息診断において重要なアレルゲンとして以下の項目が記載されております。
主要アレルゲン | 追加候補アレルゲン | |
ダニ | ヤケヒョウヒダニ | コナヒョウヒダニ |
花粉 | スギ カモガヤ ブタクサ ヨモギ |
ヒノキ ハンノキ ギョウギシバ オオアワガエリ |
真菌(カビ) | アスペルギルス アルテルナリア |
ペニシリウム |
常在真菌 | トリコフィトン | カンジダ |
動物* | イヌ ネコ |
ウサギ げっ歯類(ハムスターなど) |
その他 | ゴキブリ ガ |
ユスリカ |
*飼育しているペットが最も重要
ぜん息の原因がダニ(ハウスダスト)やカビなどの室内にあるアレルゲンの場合、掃除などの環境整備が大変重要です。アトピー型ぜん息の場合、日常生活の中で原因アレルゲンに常にさらされていると、気道の炎症が継続的なものになってしまい、症状が生じやすくなったり、気道の壁が固くなる「リモデリング」により吸入薬が効きにくくなったりしてしまいます。
人によってぜん息症状の原因は異なるため、原因アレルゲンを知ることで、効果的なセルフケアの対策をとることができます。
アレルギー性鼻炎と感染症には共通の症状もあります
小さなお子さんは、自分で症状を訴えることが難しいです。こんなしぐさや症状は、アレルギー性鼻炎に関連しているかもしれません3)。
ウイルスがついた手で目鼻をこすったり触ったりした場合にもウイルス感染する可能性があります2)。
くしゃみ1回で発生する飛沫の量は咳の10倍以上。アレルギー性鼻炎にウイルス感染が加わると周りへの感染拡大のリスクになってしまいます。
など
アレルギーかも?と思ったら医師に相談しましょう。
日本アレルギー学会運営サイトにて、全国の拠点病院やアレルギー専門医を検索できます。
1) 一般社団法人日本喘息学会.相良博典/東田有智監修. 喘息診療実践ガイドライン2021,協和企画.2021:4
2) 本邦における病院通院成人喘息患者の実態調査,アレルギー59巻1号 Page37-46(2010.01)
3) 喘息予防・管理ガイドライン2021, 一般社団法人日本アレルギー学会,協和企画
4) 喘息診療実践ガイドライン2023, 一般社団法人日本喘息学会,協和企画
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豊田地域医療センター
アレルギーセンター長
中村陽一 先生
1981年徳島大学医学部医学科卒業、同年徳島大学医学部附属病院第三内科入局、1982年高松赤十字病院内科、1985年徳島大学医学部附属病院第三内科医員、1990年徳島大学医学部内科学第三講座助手、1991年米国ネブラスカ大学呼吸器学部門、1993年徳島大学医学部附属病院講師、2000年国立高知病院臨床研究部長、2004年~2006年高知大学臨床教授(併任)、2005年横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンター長、2005年昭和大学医学部客員教授(併任)、2024年豊田地域医療センターアレルギーセンター長へ就任。
2024年4月時点