大豆アレルギー

大豆アレルギー

大豆アレルギーにはふたつのタイプがあります。

乳幼児期に発症することの多い大豆アレルギー

大豆を食べて2時間以内に症状がでることの多い、即時型と呼ばれるタイプの大豆アレルギーです。症状は皮膚症状、粘膜症状(目や鼻、口腔内)、呼吸器症状、消化器症状などさまざまです。ほとんどの場合は、大豆を食べてから2時間以内に症状がおこります。すべての症状が同時に起こるわけではなく、同じ患者さんでも原因食物を食べた際にでる症状は食べる量や患者さんの体調によっても異なります。

*皮膚症状…かゆみ、発赤、じんましん、血管浮腫など。

*粘膜症状…口の中のかゆみや違和感(イガイガ・チクチクする)、唇の腫れなど。

      鼻水、鼻づまり、くしゃみ。

      目のかゆみや充血、涙が出る。

*呼吸器症状…のどの違和感、かゆみ、しめつけを感じる。

       ゼーゼーヒューヒュー、呼吸困難など。

*消化器症状…気持ち悪い、吐き気、腹痛、下痢、血便など。

*その他症状…頭痛、眠気、意識障害、失禁、血圧低下、頻脈、徐脈。手足が冷たくなる。顔面蒼白など。

このタイプの大豆アレルギーは年齢とともに食べられるようになることが多いとされています。また、血液検査や皮膚テストで大豆が陽性になる乳幼児は多くいますが、実際に大豆を食べて症状が出る人はさほど多くありません。検査の結果だけでなく、食物経口負荷試験など医師のもと総合的に判断します。

大豆を含む食品の例1)

豆乳、豆腐、湯葉、厚揚げ、油揚げ、がんも、おから、きなこ、納豆、しょうゆ*、味噌*、大豆由来の乳化剤を使用した食品(菓子類、ドレッシングなど)

*しょうゆや味噌は大豆の発酵食品ですがアレルギーを起こすタンパク質が分解され、食べられることが多いといわれています2)


学童期以降に発症することの多い大豆(豆乳)アレルギー

学童期以降に発症する大豆アレルギーは、シラカンバ(白樺)やハンノキなど、カバノキ科の花粉症と関連する花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)が多いとされています。大豆を含む食品の中でも、豆乳(大豆を主な原材料とする飲料)で症状が引き起こされるケースが多く報告されています。豆乳の場合、液体のため一度にたくさんのタンパク質が体内に入ることや、一部のタンパク質が熱や消化に対して強い性質をもつため、呼吸困難やアナフィラキシーなどの重い症状につながることもあるとして、2013年に国民生活センターから注意を呼びかける発表がでています。

 豆乳等によるアレルギーについて 花粉症(カバノキ科花粉症)の方はご注意を‐国民生活センター

大豆アレルギーかどうかを知るには?どんな検査がある?

豆乳などによる花粉‐食物アレルギー症候群 (PFAS)が発症するのはカバノキ科花粉症が原因です。花粉に含まれるタンパク質 (Pathogenesis-related protein 10 (PR-10))と似たタンパク質が大豆にも含まれているために起こります。大豆中に含まれる花粉と似たタンパク質を『Gly m 4(読み方:グリ エム フォー)』といいます。

花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)のタイプの大豆アレルギーの場合、血液検査で『大豆』は陰性となることがありますが、大豆由来の『Gly m 4』というタンパク質の検査では陽性と判断されることが多いとされています。豆乳を飲んで口の中に違和感やかゆみを覚えるなどの症状が出た場合には、『大豆』だけでなく『Gly m 4』の血液検査の結果が診断の参考になります。検査の結果、『Gly m 4』が陽性となった場合には、大豆を含む食品の中でも、豆乳や湯葉、おぼろ豆腐に注意が必要です。もやし(大豆や緑豆などの豆類を水につけ日光に当てずに発芽させたもの)や枝豆(未成熟の大豆)によって症状が引き起こされた例も報告されています。検査の方法はほかにも、アレルギー症状を引き起こした豆乳など食品を使って皮膚プリックテストで確認する方法も取り入れられています。

『Gly m 4』について医師に相談しましょう

  日本アレルギー学会運営サイトにて、全国の拠点病院やアレルギー専門医を検索できます。

特殊な大豆アレルギー<納豆>

納豆の粘り気の成分で、発酵中に新たにつくられる物質が原因で起こるアレルギーがあります。

このアレルギーはまれですが、納豆を食べた後5~14時間と通常の食物アレルギーよりも遅く症状が現れることが多く、重篤な症状となることも多いため注意が必要です。納豆以外の大豆食品は食べられるというケースが多いです3)

納豆アレルギーは、意外なことにマリンスポーツ愛好家に見られることが多く、納豆の粘り気の成分がクラゲの触手にも存在することから、クラゲに刺されたこととの関連性も報告されています4)

アレルギーの受診と検査について詳しくはこちら

受診は治療や対処への第一歩です

アレルギーかも?と思ったら医師に相談しましょう。

日本アレルギー学会運営サイトにて、全国の拠点病院やアレルギー専門医を検索できます。

1) 独立行政法人国民生活センターHP(最終閲覧日2023年11月14日)http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20131205_1.pdf
2) 海老澤元宏監修.食物アレルギーのすべてがわかる本.講談社.2016;81.
3) 海老澤元宏編.症例を通して学ぶ食物アレルギーのすべて改訂2版.南山堂.2018;288-289.
4) 猪又直子. 特集/経皮感作からとらえる皮膚疾患 クラゲ刺傷と納豆アレルギー.MB Derma.2016;49-54.

監修医の紹介

本ウェブサイトの監修医のご紹介、ご担当ページの詳細はこちら

独立行政法人国立相模原病院
臨床研究センター センター長
海老澤元宏先生

1985年東京慈恵医科大学医学部卒業。国立小児病院医療研究センターレジデント、米国ジョンズ・ホプキンス大学臨床免疫学教室留学を経て、2000年より国立病院機構相模原病院小児科医長、2001年同臨床研究センター病態総合研究部長。現在は、国立病院機構相模原病院臨床研究センターでセンター長を務める傍ら、一般社団法人日本アレルギー学会理事長、日本小児アレルギー学会副理事長、Asia Pacific Association of Pediatric Allergy, Respirology & Immunology (APAPARI) 理事長も務めている。厚生労働省のアレルギー疾患対策推進協議会や消費者庁食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議では座長を務める。食物アレルギー分野の第一人者。

2023年10月時点