小麦アレルギー

小麦アレルギー

小麦アレルギーのタイプはさまざまですが、ほとんどは、食べた後に短時間で症状が現れる即時型の小麦アレルギーです。

即時型の小麦アレルギーの多くは乳幼児に発症するといわれています。

一方で、成人では「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA:wheat-dependent-exercise-induced anaphylaxis)」のタイプが多いです。これは、小麦を含む食品を食べただけでは症状がおこらず、食べた後に、運動することで症状がおこる対応です。体調不良、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs:non-steroidal anti-inflammatory Drugs)の内服、入浴、成人の場合は飲酒などで症状が増強することもあります。いままで小麦を含む製品を食べていて問題なく過ごせていても、小麦を食べて一定の条件が加わった場合にのみ症状が出てしまうため、診断がつくまで時間がかかるケースが少なくありません。

小麦アレルギーの症状

小児で発症する小麦アレルギーの症状は皮膚症状、粘膜症状(目や鼻、口腔内)、呼吸器症状、消化器症状などさまざまです。ほとんどの場合は、小麦を食べてから2時間以内に症状がおこります。

一方で学童期以降に発症する小麦アレルギーでは、小麦を食べて2時間以内に運動した際に症状が出るタイプが多いとされています【小麦依存性運動誘発アナフィラキシー】。食後最大4時間を経過して症状が出た人もいます。すべての症状が同時に起こるわけではなく、同じ患者さんでも原因食物を食べた際にでる症状は食べる量や患者さんの体調によっても異なります。

*皮膚症状…かゆみ、発赤、じんましん、血管浮腫など。

*粘膜症状…口の中のかゆみや違和感(イガイガ・チクチクする)、唇の腫れなど。

      鼻水、鼻づまり、くしゃみ。

      目のかゆみや充血、涙が出る。

*呼吸器症状…のどの違和感、かゆみ、しめつけを感じる。

       ゼーゼーヒューヒュー、呼吸困難など。

*消化器症状…気持ち悪い、吐き気、腹痛、下痢、血便など。

*その他症状…頭痛、眠気、意識障害、失禁、血圧低下、頻脈、徐脈。手足が冷たくなる。顔面蒼白など。


【小児で発症する小麦アレルギー(即時型症状)の診断】

小麦アレルギーの診断には、『小麦』の血液検査に加えて、『ω-5グリアジン(読み方:オメガ ファイブ グリアジン)』を参考に医師のもと総合的に判断されます。『ω-5グリアジン』は、小麦の成分のうちグルテンと呼ばれる水に溶けにくいタンパク質の中に含まれるタンパク質のひとつで、症状との関連が強いタンパク質です。小麦を食べて症状がでた場合には、『小麦』にくわえて『ω-5グリアジン』の追加検査について医師と相談しましょう。『ω-5グリアジン』が血液検査で陽性となった場合には、食べて症状が出る可能性が高いと言えます。『ω-5グリアジン』が血液検査で陰性でも症状が出てしまう方もいます。確定診断には、食物経口負荷試験で食べて症状が出るかどうかを確認します。

【学童期以降に発症する小麦アレルギー(WDEIA)の診断】

学童期以降に発症する小麦アレルギー」(WDEIA)の場合、小麦の成分『グルテン』や『ω-5グリアジン』が関与していることが多いとされています。特に成人の場合には、『ω-5グリアジン』の血液検査で90%以上が陽性となると報告されています1)。小麦アレルギーが疑われる場合には、『小麦』だけでなく、『ω-5グリアジン』や『グルテン』の血液検査の結果も参考になります。WDEIAは、アレルギーの専門医の在籍する医療機関以外では診断に難渋することが少なくありません。専門病院で正しい診断を受けましょう。

小麦を含む食品の例2)

パン、うどん、マカロニ、スパゲティ、中華麺、麩、餃子や春巻きの皮、お好み焼き、天ぷら、とんかつなどの揚げもの、カレーやシチューのルウ、など


小麦アレルギーを持つ人の中には、大麦やライ麦など、他の穀物にアレルギー反応を起こすこともあります。これは小麦と、他の穀物に含まれるタンパク質に似た構造(交差抗原性)があるためです。『ω-5グリアジン』の血液検査の結果、高値を示す場合は、大麦でも症状が出てしまう可能性が高いとされています。

『ω-5グリアジン』について医師に相談しましょう

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職業アレルギー パン職人ぜん息3)

小麦アレルギーは、小麦を食べるだけでなく、小麦粉を吸い込むことでぜん息症状を誘発することがあります。

製粉、製パン、製麺業者が小麦粉を吸い込むことでぜん息症状を誘発するケースがあります。これは、パン職人ぜん息 (Baker‘s Asthma)とよばれ、職業で小麦粉を扱ってしまう人にみられることがあります。

パンケーキ症候群

小麦粉やお好み焼き、ホットケーキミックスなどの粉製品は、開封後の保存方法が適切ではない場合、ダニが大量に繁殖することがあります。ダニが繁殖した粉製品で作られたお好み焼きなどを食べた時に、粉に含まれたダニが原因でアレルギー症状を起こすことが報告されています3),4)。お好み焼きやホットケーキミックスなどの粉製品は開封した後は、早めに食べる、保存する場合は密閉した容器へ入れて冷蔵保存が好ましいです。

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1) Eishin Morita,et al.; Food-dependent exercise-induced anaphylaxis -importance of omega-5 gliadin and HMW-glutenin as causative antigens for wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis-.Allergol Int. ,.2009;58:493-8(4)
2) 海老澤元宏編.症例を通して学ぶ食物アレルギーのすべて改訂2版.南山堂.2018;85.
3) 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会・海老澤元宏・伊藤浩明・藤澤隆夫監修.食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》.協和企画.2018;20.
4) 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会・海老澤元宏・伊藤浩明・藤澤隆夫監修.食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》.協和企画.2018;67-68, 142-148.

監修医の紹介

本ウェブサイトの監修医のご紹介、ご担当ページの詳細はこちら

独立行政法人国立病院機構 相模原病院
臨床研究センター センター長
海老澤元宏先生

1985年東京慈恵医科大学医学部卒業。国立小児病院医療研究センターレジデント、米国ジョンズ・ホプキンス大学臨床免疫学教室留学を経て、2000年より国立病院機構相模原病院小児科医長、2001年同臨床研究センター病態総合研究部長。現在は、国立病院機構相模原病院臨床研究センターでセンター長を務める傍ら、一般社団法人日本アレルギー学会理事長、日本小児アレルギー学会副理事長、Asia Pacific Association of Pediatric Allergy, Respirology & Immunology (APAPARI) 理事長も務めている。厚生労働省のアレルギー疾患対策推進協議会や消費者庁食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議では座長を務める。食物アレルギー分野の第一人者。

2023年10月時点